第99回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題Ⅲ)


21.骨粗鬆性脊椎圧迫骨折に対するBKP手術の工夫

シムラ病院 整形外科

村田 英明(むらた ひであき)、池尻 好聡、吉岡 徹、澤 幹也、伴 卓郎、斎藤 文寿、藤原 久徳、藤林 俊介

【目的】骨粗鬆性脊椎椎体骨折のうち前後壁、側壁、上位下位終板骨折を伴う、いわゆる破裂骨折(以下破裂OVF)やDISHを伴った骨折(以下DISH骨折)に対しては脊椎インプラントを用いた矯正固定手術が行われることが多い。当院では破裂OVFやDISH骨折に対しBKP手術をし、良好な手術成績を報告してきた(2021、2022、2023、2024年JSSR)。今回は過去の破裂OVF116例、DISH骨折117例のBKP治療から、骨折型に応じたBKP手術の実際について報告する。
【手術方法】破裂OVFのうち、やや陳旧性で板状に圧壊変形した骨折群21例に対しては、偽関節もしくは骨癒合遅延に伴う除痛を主目的として、変形矯正は行わず椎体内全体にセメントを挿入した。骨粗鬆症が軽い症例29例に対してはステントを用いたBKP(VBS)を行った。CT上椎体内に巨大cleftを持つ25例に対しては、症例に応じてバルーンの位置を工夫した。DISH骨折に対しては大量のセメントを椎体全体に充填する工夫を行った。
22.Redundant Spinal Cordに対する観血的手術のストラテジー:術中O-arm CTミエログラフィーの有用性

徳島大学 整形外科

添田 沙織(そえだ さおり)、森本 雅俊、手束 文威、 山下 一太、藤谷 順三、西良 浩一

【背景】脊髄が圧迫され、脊髄のくびれや偏位が生じることが稀に起こることが報告されている。腰部脊柱管狭窄症に伴うredundant nerve rootsにちなみ、redundant spinal cordと称した。非常に稀な病態であり、治療方法についての報告は少ない。当科では、観血的手術のストラテジーとして術中にO-arm CTミエログラフィーを撮影した。今回その有用性を報告する。
【症例】70歳女性、両側下垂足と下腿から両側足部への感覚低下を主訴に来院された。現病歴は、来院2年前より両側下肢の筋力低下を自覚された。麻痺は徐々に進行し、当院セカンドオピニオン受診された。両側でTA、EHL、FHLに強い麻痺を認めた。L5S1領域にも強い感覚障害を呈していた。Epiconus syndromeの診断で画像診断に移った。T2強調MRI矢状断で、第11および第12胸椎のレベルにS字状に変形している脊髄”Redundant Spinal Cord” が見られた。腹側から膨隆する椎間板ヘルニアと背側からの肥厚および骨化した黄色靭帯によるimpingementが原因と思われた。観血的手術として、後方除圧後、redundunt cordが改善しなければ、硬膜切開して脊髄の状況を観察に行くこととした。除圧固定後、L5/Sより造影剤を注入し、術中O-armを撮影した。椎弓切除のみ脊髄のredunduncyが改善しており、脊髄の観察は不要と判断できた。さらに、手術中の術中経頭蓋運動誘発電位は前脛骨筋、下腿三頭筋で術前フラットだったのが著名に改善した。術後のMRIによりconusの位置が一椎間尾側に移動しており、術前のredunduncyは、肥厚した黄色靱帯が尾側から脊髄を突き上げていたことが原因と判断した。
【結語】今回、Redundant Spinal Cordを呈するepiconus syndromeの治療経験を報告した。手術中にO-arm CTミエログラフィーを併用することにより、redunduncyの状況を把握でき、ストラテジー確定に有用であった。
23.骨粗鬆症性椎体骨折に対するvertebral body stenting system を用いた早期手術の成績

徳島健生病院 整形外科

峯田 和明(みねた かずあき)、鎌田 光洋、岡田 正彦

【目的】当院における骨粗鬆症性椎体骨折に対しvertebral body stenting system(以下 VBS)を用いた早期手術の成績を報告する。
【方法】対象はVBSを施行した31例であった。 術前・術直後・最終経過時における疼痛のvisual analog scale(VAS)、椎体楔状角、局所後弯角、椎体圧潰率ならびに術後の隣接椎体骨折に関して調査を行った。
【結果】手術は受傷から平均10日で施行し、疼痛VASは術前82.9、 術直後17.4、最終16.2と改善した。椎体楔状角、 局所後弯角、 椎体圧潰率はそれぞれ術前4.8度、 5.1度、30.1%、術直後2.1度、 2.9度、20.2%、最終5.9度、7.7度、24.8%と矯正損失を認めた。 隣接椎体骨折の発生はなかった。
【考察】隣接椎体骨折の危険因子として術前椎体楔状角25度以上の報告がある。今回は早期手術により術前の椎体楔状角が4.8度と小さかったことが隣接椎体折予防に寄与したと考えた。
24.癒着性くも膜炎によって生じた脊髄空洞症に対するS-S bypass手術の意義と効果

総合せき損センター 整形外科

河野 修(かわの おさむ)、林 哲生、坂井 宏旭、益田 宗彰、久保田 健介、畑 和宏、入江 桃、前田 健

【背景】癒着性くも膜炎は依然として難治性疾患であり確立した治療法はない。癒着剥離や硬膜形成、空洞に対するシャント術などが行われているが効果は限定的であり再発も多い。
【目的】外傷後脊髄空洞症に対して有効性が確認できているS-S bypass手術を広義の癒着性くも膜炎にも応用してきたので、その効果を検証してS-S bypass手術の意義を考察すること。
【対象と方法】くも膜病変により脊髄空洞症を生じた病態に対してS-S bypass手術を行った45例(外傷後脊髄空洞症28例、Arachnoid web6例、それら以外の癒着性くも膜炎11例)を対象とした。臨床症状を、改善、不変、悪化の3段階で評価した。また髄液還流改善効果をMRIにおける空洞縮小の有無で評価した。
【結果】45例中36例(82%)で空洞縮小が認められた。臨床症状は、32例(71%)が改善、7例(16%)が不変、6例(13%)が悪化となっていた。
【考察】S-S bypass 手術は大多数の症例で空洞の縮小を認めており髄液還流障害を改善させる効果があると考えられた。
25.腰椎術後鎮痛におけるエコーを用いないErector Spinae Plane Blockの有用性

JA 徳島厚生連 吉野川医療センター 整形外科

長町 顕弘(ながまち あきひろ)、宮武 克年、高砂 智哉、後藤 仁、井口 裕貴、河西 俊

【はじめに】2016年に報告されたErector Spinae Plane Block (ESPB)は、腰椎横突起と脊柱起立筋の間に局所麻酔薬を浸潤させ、脊髄神経後枝内外側枝を麻酔することによって術後鎮痛を得る方法である。原法ではエコーガイド下に局所麻酔薬をMultifi dusとLongissimusの筋間に注入するのであるが、今回エコーを用いずに局所麻酔薬を横突起周辺に浸潤させることにより術後鎮痛が得られ
るかどうかについて検討した。
【対象及び方法】対象は腰椎後方手術を行った30例である。平均年齢62歳であった。術前後に手術高位の両側腰椎横突起をカテラン針で穿刺し、0.375%ロピバカイン塩酸塩水和物20ccを注入した。術後1、3、5、7、9、11、20、24時間の創部痛をNumerical Rating Scale(NRS 0~10)で評価した。
【結果】平均NRS値は術後1、3、5、7、9、11、20、24時間でそれぞれ、6、3.3、3.3、2.8、4.5、3.0、3.0、2.8 であった。
26.腰部脊柱管狭窄を伴う骨粗鬆症性椎体骨折に対して腰椎椎体間固定術を行った2例

大阪回生病院1)、兵庫医科大学 整形外科2)

加藤 寛1)、橘 俊哉2)

【目的】腰部脊柱管狭窄症(LSS)を伴う骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)に対して腰椎椎体間固定術を行った2例を検討する。
【方法】2022-2023年に当院にてLSSを伴うOVFに対し、腰椎椎体間固定術を行った2例を後ろ向きに検討した。検討項目は骨折高位、隣接椎間病変、手術術式、JOAスコア、矯正損失である。
【結果】平均年齢は81(79-82)歳。女性2例。経過観察期間は平均10ヶ月(3-17ヵ月)。骨折高位はいずれもL4で、隣接椎間病変としてL4/5椎間孔狭窄が1例、L4辷り症に伴う中心性狭窄が1例であった。手術術式は経椎間孔腰椎椎体間固定術(TLIF)を行った。JOA スコアはそれぞれ術前後で12点から25点(改善率76%)、7点から21点(改善率64%)、単純Xpでの矯正損失はそれぞれ3°、2°であった。
【考察】LSS を伴うOVFには通常よりも大きめのcageを挿入にすることにより、骨折を伴う椎体間であっても安定性を得ることができると考えられた。
【結論】LSSを伴うOVFに対し、腰椎椎体間固定術を行うことにより症状改善し、短期的には良好な成績が得られた。
27.転移性脊椎腫瘍の治療成績と予後予測

九州大学 整形外科教室

釘本 裕三(くぎもと ゆうぞう)、横田 和也、樽角 清志、小早川 和、幸 博和、川口 謙一、遠藤 誠、藤原 稔史、鍋島 央、中島 康晴

【背景・目的】悪性腫瘍患者には高率に脊椎転移が生じる。本研究の目的は転移性脊椎腫瘍患者における最新の治療成績と生命予後を調査することである。
【対象・方法】2021年4月から2023年6月、当院において転移性脊椎腫瘍の診断で追跡可能であった151例を対象とした。原発巣の種類、手術、放射線療法、化学療法、分子標的薬、骨修飾薬に関する情報を調査した。さらに、SINS(Spinal Instability Neoplastic Score)、新片桐スコア、PS、Frankel分類、最終転帰を調査した。
【結果】登録時年齢は平均66.4歳、男性81例、女性70例、追跡期間は平均396日であった。半年生存率は新片桐スコア低リスク群で97%、中リスク群で79%、高リスク群で50%であった。新片桐スコアと生命予後との相関が確認された一方で、SINSと生命予後も相関していることが新たに分かった。新片桐スコア高リスク群ではSINSが高いほど半年未満の死亡率が高かった。
【結論】先行研究と比較して、新片桐スコア高リスク群では生存率は大きく改善していた。新片桐スコアに加えてSINSを併せて考慮することで、より精度の高い生命予後予測が可能になる。
28.変形矯正手術における腰仙椎部ロッド折損低減の試み―Cantilever-Expanding Technique―

佐賀県医療センター好生館 整形外科

林田 光正(はやしだ みつまさ)、馬場 覚 有薗 奨、前 隆男

【はじめに】脊柱の変形矯正、とりわけdistal anchorに骨盤を選択したlong fusionにおいて、長期的なロッドの折損が問題となっている。腰仙椎部に好発するロッド折損を予防するために我々が行っている、比較的簡便な方法(Cantilever-Expanding Technique)を紹介する。
【方法】我々はL5/S1間の椎体間固定には、扇型に開大するExpandable cage を使用している。通常通り椎体間固定を行ってExpandable cageをいったん開大する。ロッド設置後にcantileverの要領で下位腰椎から骨盤の前弯獲得を行ったあと、矯正操作でできた椎体間のギャップを埋めるようにExpandable cageを追加開大している(Cantilever Expanding Technique)。2021年から2023年に、本方法を用い変形矯正手術を行った7例を対象とした。平均経過観察期間1.5年でロッド折損は生じていない。
【考察】椎体間にケージを挿入後にCantileverを用い前弯が獲得された状態では、椎体間の前方にギャップが生じていると考えられる。その状態からケージを開大することで、前方のギャップを埋めることが出来る。本方法は矯正後のロッドへの負荷を低減することで、将来的なロッド折損のリスクを低減することが可能であると考えられる。
29.three-column osteotomyにおける骨癒合

鹿児島市立病院 整形外科1)、鹿児島大学 整形外科2)、鹿児島赤十字病院 整形外科3)

山元 拓哉1)、冨永 博之2)、坂本 光3)、河村 一郎2)、嶋田 博文1)、八尋 雄平1)、谷口 昇2)

 three-column osteotomyでは、椎体間の初期支持性と後方も含めた十分な骨移植を念頭に手術を行なってきた。奥義を述べる立場には無いが、反省を込めて振り返ってみたい。
 2007年以降grade3-5の骨切りを施行した26例中、2年以上観察した23(M10, F13)例、手術時平均55(10―78)歳を平均4.4(2-15.8)年経過観察した。基本的にgrade 3,4では隣接椎体間も骨移植した。これらの画像評価を行った。局所後弯角は術直後平均28度、術後2年で27度改善、局所側弯角は術直後平均20度、術後2年で19度改善した。術後2年のCTでの骨癒合は、前方で17例(74%)、後方で13例(57%)であり、21例(91%)でいずれかで骨癒合していた。1例で骨切り椎体の遠隔部でのrod折損を認めた。椎体間の骨癒合率は必ずしも高くなく、偽関節やrod折損の回避には後方への骨移植も不可欠であると考えられた。
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