第99回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題Ⅱ)


14.Baastrup病に対するFESS棘突起間クリーニング

徳島大学  医歯薬学研究部 運動機能外科学

三尾 亮太(みお りょうた)、西良 浩一、山下 一太、手束 文威、森本 雅俊、添田 沙織、神田 裕太郎、牧山 史亮

【はじめに】Baastrup病は棘突起後方のインピンジメントにより生じ、腰椎伸展時の腰痛の原因とされている。棘突起間ブロックが著効するが、難治性の症例には棘突起の部分切除術が有効であるとの報告もある。今回、Baastrup病に対して全内視鏡下での棘突起間クリーニングを施行し、良好な経過が得られたため報告する。
【症例】19歳、男性、サッカー部所属の大学1年生。高校3年生の春にL3椎体骨折を生じ、その後腰椎の伸展時痛が遷延していた。複数の医療機関を受診するも症状の改善なく、前医よりBaastrup病疑いで当院紹介となった。MRI-STIRではL4、L5の棘突起及びL4/5/Sの棘間靭帯に炎症を反映した高信号域を認めた。棘突起間ブロックが著効したが、強い手術希望がありFESS棘突起間クリーニングを施行した。術後は腰痛の改善を認め、腰椎の伸展が可能となった。術後2ヶ月時点で腰痛の再燃は認めていない。
【結語】Baastrup 病に対するFESS棘突起間クリーニングの有効性が示唆された。
15.奥義の可能性を感じるAFESS;導入初期の手応え

九州中央病院 整形外科

井口 明彦(いのくち あきひこ)、泉 貞有、今村 隆太 濱田 貴広、中村 公隆、白崎 圭伍、山下 道永、山田 尚平、塚原 康平、有薗  剛

 腰部脊柱管狭窄症に対する内視鏡下除圧術にはMEL(Micro endoscopic laminoplasty)、FEL(Full endoscopic laminoplasty)、UBE-ULBD(Unilateral Biportal Endoscopic Laminectomy-Bilateral Decompression)等があり、当院ではMELおよびFELを行ってきた。FESS(Full Endoscopic Spine Surgery)をUBE-ULBDに利用するAssisted FESS(AFESS)が2023年に報告され、当院でも2024年2月にAFESSを開始。優れた操作性(除圧、止血、ドレーン設置)、少ない術後疼痛、良好な術後成績を実感している。全脊椎内視鏡ワーキングチャネルを含めた二つの操作経路から病変へアクセスする高い自由度、把持力の強い鉗子類、弯曲ケリソンなどの使用による作業効率の良さが強みと考えている。
 導入初期であり症例数は少ないがMEL、FELとの比較を含め、私見を交え報告する。
16.FESSによる脊柱管狭窄症手術における術中止血の重要性と成績向上の工夫

地域医療機構九州病院 整形外科

土屋 邦喜(つちや くによし)、大森 裕己

background:全内視鏡による脊柱管狭窄手術(Full Endoscopic Laminotomy, FEL)は低侵襲であるが、骨切除や硬膜管の展開面積が広いことから術後血腫のリスクは決して低くはない。本手術において血腫防止、成績向上に関する工夫を考察する。
【症例】導入以来1椎間の脊柱管狭窄症330例に対してFELを適応してきた。この間4例の血腫に対する再手術を経験した。
【結果及び考察】止血困難な出血形態は①硬化した骨の骨孔からの出血、②骨粗鬆性変化の強い海綿骨からの出血である。また硬膜周囲では十分な血管組織の同定および周辺剥離操作で不用意な血管損傷を避けることが重要である。術後血腫疑いに対する再手術においてあきらかな血腫を認めたのは一例のみであった。この結果を踏まえ十分な術中止血施行の上当科では全例ドレーンは翌日抜去している。
【まとめ】FESSにおいては出血を抑えることが視野確保による手術の円滑な進行のみならず術後血腫防止に極めて重要である。
17.第5腰椎分離すべり症に対して局所麻酔・TF-FESS Pars Crisscross Decompressionを行った4例

徳島大学病院 整形外科

牧山 文亮(まきやま ふみあき)

 腰椎分離すべり症に対する除圧術単独は、神経根症を有する患者に以前から行われてきた。しかし、全内視鏡下に除圧術を行った報告は少なく、その治療成績も安定していない。今回、第5腰椎分離すべり症の4例に対して局所麻酔・TF-FESSを用いた新たな椎間孔拡大術Pars Crisscross Decompression を行い、良好な短期成績が得られたため報告する。この除圧法はS1上関節突起、L5分離椎弓の一部、L4下関節突起先端、分離部頭側端であるragged edgeの順に骨を削り、exiting nerve root を除圧する方法である。4例とも術後より下肢痛VASは低下し、CT画像評価では椎間孔面積の拡大が得られた。局所麻酔・TF-FESS に よ るPars Crisscross Decompressionは、腰椎分離すべり症による神経根症に対して有効な手術法で、特に全身麻酔のハイリスク例やインストゥルメント使用の適さない例には効果的である。
18.ME-ELIF手技発展のための創意工夫

長崎大学 整形外科1)、重工病院記念 長崎病院 整形外科2)、虹が丘病院 整形外科3)、日浦病院 整形外科4)

田上 敦士(たがみ あつし)1)、尾崎 誠1)、横田 和明1)、三溝 和貴1)、相良 学1)、矢部 嘉浩2)、安達 信二2)、依田 周2)、山田 周太3)、日浦 健4)

【はじめに】我々は2015年より顕微鏡下でのOon Ki BaekのELIF(M-ELIF)を開始し、2019年からはME-ELIFを行っている。手術手技を徐々に改良しながら発展させて来た。1st GenerationではBullet型Expandable ケージを2個片側から挿入した。2nd Generation ではBoomerang型Expandablecageを使用した。3rd GenerationではMEDの1st DilatorをKambin’s Triangleに挿入してTube Retractorを設置した。4th Generationでは対側のKambin’s TriangleにMEDの1stもしくは2nd Dilatorを挿入し、すべりや椎間板高の整復を行いケージを入れやすくした。
【目的】ME-ELIFのそれぞれの手術侵襲や臨床成績が改善されたかを検討する。
【対象方法】腰椎すべり症に対して1椎間ME-ELIFを行ない、6ヶ月以上経過観察可能だった124例を対象とした。手術時間、術中出血量、術前および術後6ヶ月でのJOA Scoreを調査した。
【結果】手術時間(分)は1st 105、2nd 77.7、3rd60.9、4th 47.2、出血量(g)1st 23.4、2nd 28.0、3rd 24.8、4th 24.8であった。JOA Score改善率(%)は1st 79.8、2nd 80.2、3rd 74.9、4th. 83.0 であった。
【考察】ME-ELIFは間接除圧で行う椎体間固定術である。今回のシリーズでは改良を加えるたびに手術時間が短縮されが、神経合併症は認めなかった。ME-ELIFは低侵襲で安全な術式に改良されてきた。
19.除圧後の再手術例に対するKLIFシステムを用いた全内視鏡下脊椎固定術

兵庫医科大学 整形外科

木島 和也(きしま かずや)、圓尾 圭史、有住 文博、加藤 寛、山浦 鉄人、波田野 克、橘 俊哉

【はじめに】全内視鏡下脊椎固定術は後方成分を温存でき、またPPS挿入と約2cmのケージ挿入部の皮膚切開のみで可能な椎体間固定術であり低侵襲な固定術といえる。
【代表症例】82歳、女性。左大体前面痛を主訴に当院紹介受診。前医にてL2/3-L5/S1の椎弓切除術を受けられるも症状が残存。左L4根ブロックにて再現性および効果を認めL4/5椎間孔狭窄による4根障害と診断。椎体間不安定性があったため脊椎全内視鏡下固定術を行った。術後下肢痛は消失。合併症なく術後8日目に自宅退院となった。
【まとめ】今回同高位の再手術例にKLIFシステムを用いて脊椎全内視鏡下固定術を行った。術後成績は良好であり、従来行っているTLIFに比べ術後早期の創部痛も少ない印象で早期の歩行機能の獲得・退院が可能であった。またトランスフォラミナールアプローチで行うため初回手術と異なるアプローチで手術が可能で、硬膜損傷等の合併症も回避できるため再手術例に特に有用な術式と考えている。しかしこの手術を安全に行うためには全内視鏡下での椎間孔拡大術の技術の習得が重要である。
20.脊椎手術におけるO-armの有用性

徳島県鳴門病院 整形外科

中島 大生(なかじま だいき)、千川 隆志、福田 雄介、平野 哲也、岩目 敏幸、日比野 直仁、邉見 達彦

【はじめに】当院ではO-armとStealthStation8(Medtronic社)を2020年に導入し脊椎手術に応用してきた。今回様々な手術に適用しその有用性と問題点について検証する。
【対象、方法】2022年4月から2023年3月までの1年間にO-armを使用した脊椎手術症例61例を対象とし、術前と術後CTを比較、術中O-arm&Navigation手術におけるScrewの精度、OPLLやOYLの除圧不足の有無等を検討した。
【結果】内訳は頚椎前方固定術:12例、頚椎後方固定術:9例、骨粗鬆性圧迫・破裂骨折にFenestrated screwを使用した後方固定術:7例、胸椎後方除圧固定術(脱臼骨折、腫瘍転移等):18例、再手術例に対する固定術:4例、変性後側弯症に対する後方矯正手術(Th10-S2AI等):11例で使用していた。
【考察】O-arm併用Navigation使用下ではscrewの刺入は正確であった。頸椎後方手術ではGGSのみでは吊橋状になる。screw挿入精度を上げるためFace flameの固定も併用している。C1LMS、C2、C7PS挿入の際にはそれぞれリファレンスフレームを設置し撮影するが、その分手術時間は延長する。胸腰椎広範囲固定術ではリファレンスフレームから遠ざかれば精度が落ちる可能性がある。男性で身体の大きな症例ではO-armの撮影回数が増えることがある。
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