8.腰椎再手術症例に対するPETLIFによるindirect decompressionの短期成績 北九州市立医療センター整形外科 吉兼 浩一(よしかね こういち) 【はじめに】手術既往のある椎間のdirect decompressionは硬膜外腔の癒着や瘢痕の処置で硬膜神経根損傷を引き起こすリスクが通常よりも高くなる。当院で施行したPETLIFによる手術既往のある椎間のindirect decompressionの短期成績について報告し、有用性と問題点について検討した。 【対象】2020年2月から2023年7月に施行したPETLIF41例中、施行高位に手術既往のあったのは15例16椎間で、病態は再発性脊柱管狭窄症10例(狭窄症後方除圧術9例、Love法1例)、椎間孔狭窄4例(狭窄症後方除圧術3例、FESS椎間孔拡大術後1例)であった。 【方法】臨床成績を術前と最終調査時のJOABPEQ、NRSで評価した。 【結果】データ欠落のない13例(男8、女5、手術時年齢67.4±9.2歳)の手術時間は79±24分、術中出血量は16±23gであった。術後ドレーンは留置せず、翌日よりコルセットを装着し歩行開始した。平均経過観察期間は11.8ヶ月で、JOABPEQ は疼痛関連、歩行機能、社会生活の各障害が有意に改善し、NRSは腰痛と下肢痛で有意な改善していた。 【結語】短期的だが(再)再手術を要した症例はなく、本術式の有用性が示唆された。 |
9.FE-KLIF におけるレスキューカニュラの開発と有用性 徳島大学整形外科1) 旭川医科大学整形外科2) 水谷 幸三郎(みずたに こうざぶろう)1)2)、添田 沙織1)、公文 雅志1)、杉浦 宏祐1)、手束 文威1)、山下 一太1)、西良 浩一1) 【初めに】全内視鏡下腰椎椎体間固定術(full endoscopic trans-Kambin lumbar interbody fusion : FE-KLIF)は最も低侵襲に行える椎体間固定術手技であるが、trans-Kambinアプローチ特有の合併症であるexiting nerve root injury (ENRI)の発生が危惧される。今回、ENRI発生回避のためにレスキューカニュラを開発したため、その有用性を報告する。 【レスキューカニュラの特徴】FE-KLIFでは、スペーサーをKambin三角より挿入し、そのスペーサーをガイドとしてopen角カニュラを挿入する。この操作でENRI発生が危惧されるため、 exiting nerve root側のカニュラ面を2mm短くし干渉を避けるデザインとした。 【代表症例】72歳、女性。L4変性辷り症(%Slip 33%)に対しFE-KLIFを施行した。 術中、ケージ挿入のためのカニュラ設置時に左大腿四頭筋のEMG free runアラームが鳴り、レスキューカニュラに変更した。カニュラ変更後、 アラームは消失し安全にケージ挿入を行えた。 【結語】これまで我々のグループにおけるENRI発生率は4.0%であったが、最近レスキューカニュラを使用した8例でENRIの発生を回避できた。今後 も症例を重ね、レスキューカニュラの有用性を検討していきたい。 |
10.腰椎圧迫骨折後後弯変形に対する、OLIFによる矯正固定術の一例 県立広島病院 整形外科 西田 幸司(にしだ こうじ)、三谷 雄己、加藤 慶、平田 裕己、松下 亮介、中村 光宏、松尾 俊宏 【はじめに】腰椎圧迫骨折による変形により椎間孔狭窄をきたすことがあり、変形が高度であると前方手術が必要となる場合がある。今回、我々は腰椎圧迫骨折後後弯変形に対し、OLIFによる矯正固定術を経験したので報告する。 【症例】91歳、男性、既往症に糖尿病、狭心症、関節リウマチがあった。X-1年2月 L4圧迫骨折を伴う腰部脊柱管狭窄症に対し、L4/5除圧術施行。 術後両下腿痛は改善したが、しばらくして右大腿痛が出現。内服、神経根ブロックにて症状消失しないため、X年3月手術を希望された。レントゲン上、L4椎体は高度楔状椎でL4/5は屈曲-18°、伸展-29°と不安定性を認めていた。 X年5月 後弯変形を伴う椎間孔狭窄に対し、OLIF25、Clydesdale PTC(Medtronic社)を用い、L4/5椎体間固定術を施行。手術時間3時間33分、出血は67mlであった。術後、L4/5は0°に矯正され、術後下肢痛改善し術後2週で転院となった。 術後3ヵ月で明らかなスクリューのルースニングは認めず、SVA 73→55mm、LL 8→16°、SS 12 →18°、PI 42→42°、PT 29→24°とアライメントは改善している。 |
11.骨粗鬆症性椎体骨折に対するBKP+PPS固定の治療成績 福岡記念病院 脊椎脊髄外科1) 久留米大学 整形外科2) 松原 庸勝(まつばら つねまさ)1)2)、吉松 弘喜1)、横須賀 公章2)、佐藤 公昭2) 【諸言】骨粗鬆症性椎体骨折に対する経皮的椎体形成術(BKP)は良好な治療成績が報告されているが、BKP単独では術後破綻をきたすことがある。そのような症例には固定の追加が望ましいとされる。 【対象と方法】2022年4月から2023年5月に同一術者がBKP+PPS 固定を施行した症例(10例、平均80歳、平均観察期間7.2か月)を対象とした。術前の調査項目は5mm以上の椎体不安定性、罹患椎体上下の椎間板内ガスの有無、局所後弯角(臥位)を、術後の評価項目はimplant failure(スクリュー脱転、緩み)、再手術の有無を評価した。 【結果】椎体不安定性は全例で認め、椎間板ガスは上位に8例、下位に3例認めた。局所後弯角は10°~30°と全症例で後弯化していた。術後スクリューの脱転を2例、緩みを3例に認め、そのうち2例で再手術(抜釘、椎体置換1例ずつ)となっていた。 【考察】椎体及び椎間不安定性を認める症例に対して当術式が行われていた。局所後弯角が高度の症例には当術式の限界が示唆された。 |
12.後期高齢者(75歳以上)の胸腰椎脆弱性椎体圧潰に対する側臥位single position surgery を利用した前後合併手術 香川県立中央病院 整形外科 生熊 久敬(いくま ひさのり)、廣瀬 友彦 【はじめに】当科では高齢者の胸腰椎脆弱性椎体圧潰に対して、側臥位single position surgeryを利用した前方mini open corpectomy、後方PPSによる前後合併手術を行なっている。本法を用いた75歳以上の後期高齢者の手術成績について報告する。 【対象】75歳以上で胸腰椎脆弱性椎体圧潰に対して本法を行ない半年以上の経過観察が可能であった24例を調査した。 【結果】平均年齢79.8歳、72.7%が女性で、%YAMは73.8%、平均観察期間は16.4ヵ月であった。疾患の内訳は、圧迫骨折後椎体圧潰22例、受傷時破裂骨折2例、BKP後椎体圧潰1例。1椎間あたりの手術時間と出血量は94.2分、122.1mlであった。局所後弯角は、術後有意に改善し最終観察時まで維持できていた。合併症は、固定端での椎体骨折7例(29.1%)、下肢静脈血栓症5例(20.8%)、術後せん妄4例(16.6%)、術中腎臓損傷1例、術後乳糜胸1例(4.1%)で、再手術は5例(20.8%)に行われていた。JOABPECおよび腰痛 VASは最終観察時には有意に改善していた。 【考察】本法は従来法に比べて低侵襲で術後臨床成績も有意に改善できたが、硬い固定になるが故に固定端での椎体骨折(29.1%)が問題点であった。 |
13.DISH を伴う胸腰椎骨折に対し、腹臥位でロック機構が付いたインプラントを使用し整復固定を行なった4例 川崎医科大学 整形外科 内野 和也(うちの かずや)、中西 一夫、渡辺 聖也、射場 英明、杉本 佳久、長谷川 健二郎 【はじめに】びまん性特発性骨増殖症(以下、DISH)を伴う胸腰椎骨折では、骨折部の不安定性が強く腹臥位になると転位が増悪し、整復が困難になり骨癒合不全などの合併症の可能性が危惧される。今回我々は腹臥位にて新たなロック機構が付いたインプラントを使用し、DISHを伴う胸腰椎骨折に対して整復固定した症例4例を経験したので報告する。 【対象と方法】腹臥位にてロック機構が付いたインプラントを使用して後方固定術を行ったDISHを伴う胸腰椎骨折4例である。手術は経皮的椎弓根スクリューで行なった症例は3above3belowを原則としている。整復方法は骨折椎体の上下椎体にヘッドロック機構が付いたスクリューを使用し、デバイスを用いて矯正を行っている。 【考察】側臥位での後方固定術は術者の練度による影響が強いと考え、また腹臥位での手術であれば、脊椎外科であればストレスなく施行できる。さらには今回ロック機構が付いたインプラントを使用することによって矯正固定術が行え、有用な方法の1つであると考える。 |
14.外傷性胸腰椎破裂骨折に対する後方固定術の治療成績-shortとlongの比較 福岡大学医学部 整形外科学教室 古賀 大智(こが だいち)、柴田 達也、田中 潤、塩川 晃章、眞田 京一、萩原 秀祐、佐々木 颯太、山本 卓明 【目的】当院での胸腰-腰椎破裂骨折に対する後方固定術の治療成績を検討した。 【方法】2014.1月-2023.3月に後方固定術を受けた単一椎体の破裂骨折22例のうち、骨折椎を含む2椎間固定をS群(16例)、骨折椎を除く4椎間固定をL群(6例)とした。年齢、性別、BMI、喫煙、損傷椎体、骨折型、神経損傷、手術(展開、時間、出血量、除圧・矯正の有無)、画像(楔状角・ 局所後弯角、矯正損失、緩み)、再手術について2 群間で比較検討した。 【結果】矯正損失は2群間で有意差を認めなかった。術前の楔状角(平均S:11°、L:25°)と局所後弯角(平均S:2°、L:19°)はL群で大きく、L群で手術時間が長く(平均S:84分、L:145分)、除圧併用が多かった(S:1例、 L:3例)。(p<0.05) 【考察】骨折椎の圧壊が少ない例はshortの固定力で十分といえる。S群の1例に緩みによる抜釘を要したため、高齢者で骨折椎の上下の椎間板に高度変性が予想される場合は固定範囲拡大を考慮する必要がある。 |
15.転移性脊椎腫瘍におけるMISt手技のADL改善に及ぼす効果 鹿児島大学 整形外科 嶋田 博文(しまだ ひろふみ)、冨永 博之、河村 一郎、八尋 雄平、徳本 寛人、山元 拓哉、谷口 昇 【はじめに】転移性脊椎腫瘍は麻痺や脊椎の不安定性に伴う疼痛などによりADLの低下をもたらすため、癌治療継続のために手術加療を選択することも多い。一方最小侵襲脊椎安定術(MISt)の発展で、予後不良な症例に対してもADL改善と治療の継続が可能になることが見込まれ、手術が施行されるようになってきている。今回我々はMIStが転移性脊椎腫瘍患者のADL改善に有効であるかどうか検討した。 【対象と方法】対象は当科関連病院で2018年4月以降に転移性胸腰椎腫瘍に対する手術加療を行った9例である。検討項目は、生存率、年齢、性別、SINスコア、手術時間、術中出血量、Frankel分類、Performance Status、さらに健康アウトカム指標であるEQ5D、Barthel Index、Vitality index とし、臨床評価は術前・術後1ヶ月・術後6ヶ月で評価した。MIStを施行した6例(MISt群)と従来式後方固定術を施行した3例(Open群)の2群に分けて比較検討した。 【結果】MISt群は全例術後6ヶ月で生存していたが、Open群は1例のみであった。術後6ヶ月生存症例は全例治療が継続できていた。年齢、性別、SINスコアはMISt群とOpen群の両群に有意差はなかった。術中出血量は有意にMISt群で少なく(MISt群:45.8ml、Open 群:191.7mlp<0.01)、手術時間もMISt群で有意に短かった(MISt群:67.0分、Open 群:150.1分、p<0.05)。全例術前Frankel分類はEであった。術後6ヶ月経過が追えた症例中、PSが1段階以上の改善を認めたのはMISt群で6例中5例(83.3%)、Open群で1例中1例(100.0%)であった。健康アウトカム指標に関しては、両群間に有意差はなかった。 【考察】MIStは転移性脊椎腫瘍に対しても手術侵襲が少ない手術手技であることから、症例を選べば最適な手術方法であり、患者の治療継続・ADL改善に有用であると考えられた。 |