第98回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題Ⅰ)


1.腰椎変性すべり症のCARDS分類における内視鏡下椎弓切除術の治療成績

九州大学整形外科

樽角 清志(たるかど きよし)、横田 和也、小早川 和、幸 博和、川口 謙一、中島 康晴

【目的】本研究の目的は腰椎変性すべり症(以下DS)患者をCARDS分類に基づいて分類し、内視鏡下椎弓切除術の治療成績評価を行い、CARDS分類
が治療方針決定の指標になりうるか検討する事である。
【方法】2018年4月から2022年3月までにDSの診断に対して1椎間の内視鏡下椎弓切除術を行い1年以上経過観察可能であった35例を対象とした。
CARDS 分類に従ってType A、B、C、Dの4群に分類し、ODI、JOABPEQ各ドメインについて術前、術後6ヶ月、術後1年の時点で評価を行った。
【結果】CARDS 分類ではType A 0 例、Type B 15 例、Type C 14 例、Type D 6 例に分類された。術前のODI、JOABPEQ各ドメインに有意差は認めなかった。ODIにおいては術後1年の時点でTypeDでは有意な改善は見られなかった。JOABPEQにおいては術後1年の時点では疼痛関連障害においてType D、歩行機能障害においてType Cの獲得量が低かった。
【考察】CARDS 分類Type Bに対する内視鏡下椎弓切除術の治療成績は術後1年まで安定していた。一方でType Dにおいては治療成績が劣る傾向があ
るため術式選択の際に注意が必要であると考えられた。
2.L5/S1 腰椎椎間板ヘルニアに対する脊椎内視鏡下手術 -「女性患者」「左側アプローチ」の方が手術は容易なのか? –
 
九州中央病院 整形外科
北九州市立医療センター 整形外科

泉 貞有(いずみ ていゆう)、 井口 明彦、今村 隆太、濱田 貴広、中村 公隆、白﨑 圭俉、山下 道永、山田 尚平、今里 友亮、塚原 康平、吉兼 浩一、有薗 剛
 
【目的】L5/S1 ヘルニアに対するMED法では、「女性」「左側」が技術的に容易であると日整会セミナーで指導を受けたことがある。この真偽に関して調査した。
【対象と方法】2009年~2022年まで、L5/S1ヘルニアに対する脊椎内視鏡下手術を施行した558例(MED法207例、FED法351例)を対象とした。腰椎正面Xpでinterlaminar window(以下、ILw)の横径&高さを評価した。診療記録から、男女、左右、手術時間、術中出血量等を調査した。
【結果】ILwの横径&高さは平均27.4mm&10.9mmであった。ILwの横径は男性27.8mmが女性25.8mm と比較して有意に大きかった(p<0.01)。手術時間および術中出血量に関して、男女間および左右間に有意差を認めなかった。
【考察】「男女」「左右」の間に有意差を認めず、技術の難易度は同程度と考えられた。
【結論】L5/S1 ヘルニアに対する脊椎内視鏡下手術では、「女性患者」「左側アプローチ」が技術的に有意に容易という訳ではない。
3.Modic change 関連慢性腰痛に対する全内視鏡下椎間板内クリーニング手術の臨床成績と成績に影響する因子の検討
 
徳島大学整形外科

杉浦 宏祐(すぎうら こうすけ)、添田 沙織、水谷 幸三郎、公文 雅士、手束 文威、山下 一太、藤谷 順三、西良 浩一
 
【背景】Modic change(MC)は非特異的腰痛の原因の1つで、投薬や装具療法、ブロックなどの保存療法が奏功せず罹患部の固定術に至る場合も多い。
【目的】MC 関連慢性腰痛に対して実施した全内視鏡下椎間板内クリーニング手術(FEDC)の成績を報告する。
【対象】MC関連腰痛と診断されてFEDCを行い3か月以上経過観察した26例(男20例、女6例、平均年齢53.2歳、平均腰痛期間7.6年)を対象とした。MCを有する椎間板にブロック注射を行い除痛を得た症例をMC関連腰痛と診断した。手術は局所麻酔下にtransforaminal 法で行い、可及的に椎間板の郭清と終板のラジオ波焼灼を行った。腰痛をVAS(mm)で評価し、最終調査時に術前の20mm以上減少し追加手術を要さなかった例を有効例と定義した。
【結果】術後観察期間は平均13.0か月で、VAS平均は術前65.3±3.3から最終観察時に35.5±1と有意に改善した。有効例は15例で非有効例と比較して若年齢、非Modic change type 3、下位椎間、椎間板造影時再現痛の特徴が見られた。
【結語】FEDCはMC関連慢性腰痛に対する新たな術式で、年齢やMRI所見などを考慮すればより良好な成績が期待できる。
4.Full-endoscopic lumbar discectomy(FELD)による局所小病変に対する治療
 
香川大学 整形外科
 
医療法人光安整形外科1)
北九州市立医療センター整形外科2)

菊池 克彦(きくち かつひこ)1)2)
吉兼 浩一2)、光安 廣倫1)、光安 元夫1)
 
 Full-endoscopic lumbar discectomy(FELD)は、生理食塩水還流下に手術を行うため従来の手術法に比べて鮮明な視野が得られる。また、径8mm程の硬性鏡を神経根やヘルニア等の病変部へピンポイントで挿入し、病変部へ接近する事ができるため、従来の方法では観察困難であった様子を鮮明に観察することができる。今回、局所小病変に対してinterlaminar法によるFELDを行った4例を、FELDで観察しえた鮮明な所見とともに提示する。
 症例は画像上小さな腰椎椎間板ヘルニア3例、ガス含有腰椎椎間板ヘルニア1例である。術中、神経根の癒着や病変部の状態を詳細に観察することができた。いずれの症例も術後症状は改善し、良好な結果が得られた。
従来の方法に比べ、FELDは鮮明な視野で低侵襲に手術を行う事ができる。局所小病変に対しても神経根や病変部周囲を詳細に観察することができ、非常に有用と思われた。
5.L5/S1 椎間孔狭窄に対するFull-endoscopic Lumbar Foraminotomy の X 線学的検討 -L5 横突起の形態に着目して-
 
徳島大学整形外科
 
公文 雅士(くもん まさし)、手束 文威、水谷 幸三郎、添田 沙織、杉浦 宏祐、山下 一太、西良 浩一
 
【目的】L5横突起の形態に着目して行ったL5/S1椎間孔狭窄に対するFull-endoscopic Lumbar Foraminotomy(FELF)の術前後のX線学的検討を行ったので報告する。
【方法】対象は術後6か月以上経過観察可能であった13例(男7例、女6例)。手術時平均年齢は70歳。これらの症例に対して、L5横突起の大きさ、L5横突起と仙骨翼との距離、術後側弯や椎間不安定性などにつき検討した。
【結果】CTにおけるL5横突起の最大頭尾側長は平均11.1mm、L5横突起と仙骨翼との距離は平均1.4mmであった。このうち、両者の接触を認める”lateral kissing spine” を6例に認めた。単純X線立位正面像におけるL1-S1側弯角およびL5-S1 側弯角は術前後で差は認めなかった。
【結論】L5/S1 FELFの際、特に変性側弯合併例において、S1上関節突起の切除により術後不安定性が危惧されるが、今回注目したL5横突起の形態が
術後椎間安定性に寄与している可能性が示唆された。
6.Navigation system を併用した PED(FESS)を用いて頚椎椎間孔形成術を施行した1症例
 
いまきいれ総合病院1)
鹿児島大学医学部付属病院 整形外科2)

宮口 文宏(みやぐち ふみひろ)1) 、川畑 直也1)、谷口 昇2)
 
【背景】内視鏡を用いた頚椎椎間孔形成術では、頚椎高位の確認・椎間関節の骨切除量などラーニングカーブが険しい。PEDはMEDと比較して容易に椎弓後面に達するがscopeを自力で保持しなければならない。下位頚椎になるとイメージ側面では確認が困難である。椎間関節の内側縁を削る左右の幅・頭尾側の幅も同定困難である。
【目的】今回我々は、C6/7頚椎症性神経根症に対して、Navigation system を併用下PEDを用いて椎間孔形成術を施行した症例の、その工夫を報告すること。
【考察】シーツをかける前に脳神経外科が施行するようにメイフィールドの延長上にreference frameを設置し、O-armで撮影する。C5/6,6/7 レベルであれば棘突起にreference frameを設置する。手術操作をする椎体にreference frame を設置すると精度は上がる。今回C6棘突起は短く、C7棘突起は細かったためやむなくC6の対側の椎弓根にreference frameのスクリューを設置した。術中canullaの位置が正確に把握可能であり、O-armで撮影すると椎間関節の骨切除した部位も確認可能である。
【結語】PEDを用いた頚椎椎間孔形成術に対して、Navigation system併用は有効な方法の一つである。
7.顕微鏡システムORBEYEを使用した頸椎椎弓形成術の低侵襲化への取り組み

香川大学医学部付属病院 整形外科

山本 修士(やまもと しゅうじ)、小松原 悟史、藤木 敬晃、石川 正和

 これまで当院で椎弓形成術は該当高位の範囲を後方から切開して行う従来通りの方法で行ってきた。
 当院では手術用顕微鏡システムORBEYEが2023 年春に当院に導入され、その特徴を生かして、頸椎椎弓形成術の低侵襲化を目指しており、その取り組みを紹介する。ORBEYEは視点を自由に動かすことができ、皮膚切開をこれまでよりも小さく、扇状に奥行きを展開することで、より小さな皮膚切開での手術が可能になる。それにより術後の創部痛や軸性疼痛の軽減が得られる可能性がある。
 また骨溝作成の際に、助手側の骨溝を術者側から掘削することで、ダイヤモンドバーの先端の回転軸から離れた部分で掘削し、掘削時間の短縮になる可能性を考えている。椎弓形成術に限ったことではないが、同じ姿勢による苦痛を余儀なくされていた接眼レンズから解放され、大型モニターで手術室内の医療従事者が画像を共有でき、若手ドクターへの教育目的としても活用できる。当院で導入以降、椎弓形成術は9月15日時点、わずか4例で、まだまだラーニングカーブが存在するが、継続していきたい。
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