第97回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題Ⅳ)


22.頚椎後縦靭帯骨化症の手術選択における頚椎伸展位K-lineの有効性
 
鹿児島大学 整形外科
 
徳本 寛人(とくもと ひろと)、冨永 博之、河村 一郎、佐久間 大輔、眞田 雅人、小倉 拓馬、谷口 昇

【目的】頚椎OPLLに対する手術選択の指標としてK-lineが用いられている。頚椎伸展位におけるK-line(E-K-line)により術後成績が変化する可能性があると仮定し検討を行った。
【方法】2007年から2020年に頚椎OPLLに対して椎弓形成術を施行し、術後1年以上観察された患者を後ろ向きに検討した。OPLLのピークがK-lineを超えE-K-lineを超えない症例をE-K-line(+)、超える症例をE-K-line(-)と定義した。3群間のJOAスコア術後変化をKruskal-Wallis検定で比較後、各々2群間の比較に多重検定を行った。
【結果】K-line(+)44例、E-K-line(+)12例、E-K-line(-)6例の計62例で、JOA改善率は3群間で有意差を認めた(55.4%vs46.6%vs23%、p=0.03)。JOA改善率はE-Kline(-)が K-line(+)に比べて有意に低かったが、E-K-line(+)とK-line(+)の間で有意差を認めなかった。
23.頚椎後縦靭帯骨化症の術後成績に影響を与える術前の身体機能と画像所見の検討

久留米大学病院 整形外科
 
不動 拓眞(ふどう たくま)、橋田 竜騎、森戸 伸治、松尾 篤志、横須賀 公章、佐藤 公昭、平岡 弘二
 
【背景】頚椎後縦靭帯骨化症(以下OPLL)は脊髄症を引き起こし、症状が進行すると身体機能の低下をきたす。脊髄の変性が可逆的か否かを術前に評価することは困難である。本研究の目的は頚椎OPLL患者の術前の身体機能と画像所見を調査し、術後改善予測因子を明らかにすることである。
【方法】頚椎OPLLに対して椎弓形成術を施行した46例を後ろ向きに調査した。術前と術後1年にJOAスコアを測定し、改善率50%以上を改善群と定義した。調査項目は、罹病期間、糖尿病の有無、身体機能として術前にSTEF、握力、TUG、10m 歩行、片脚起立時間を測定した。術前の画像所見は、OPLLの分類、C2-7角、骨化占拠率、最狭窄高位、MRI髄内輝度変化を調査した。JOA改善に影響を与える因子を単変量解析と多変量解析を用い調査した。
【結果】改善群は13例、非改善群は33例であった。年齢 (p=0.0062)、罹病期間 (p=0.0011)、10m歩行時間 (p=0.0002),TUG(p=0.0063)、MRI T2高輝度(p=0.0023)で有意差を認めた。多変量解析によって10m歩行がJOA改善因子であることが明らかになった。
【考察】本研究では術後予測因子は10m歩行時間であった。歩行障害をきたす前に除圧することで術後の症状改善が期待できる。
24.頚椎OPLLに合併した首下がりに対し頚椎~胸椎後方固定術後下位隣接椎間障害が出現した1例
 
長崎労災病院 整形外科
 
樋口 尚浩(ひぐち なおひろ)、馬場 秀夫、今井 智恵子、貞松 毅大、郷野 開史、神﨑 衣里
 
【はじめに】首下がりには頚椎限局型と胸腰椎型が存在する。従って首下がりに対し手術を行う場合、全脊椎のアライメントを考慮する必要がある。頚椎OPLLに合併した首下がりに対し頚椎から胸椎後方固定術を行ったところ固定下位に隣接椎間障害が出現した1例を経験したので報告する。
【症例】76 歳、男性。4-5年前より頚椎前屈姿勢となり徐々に手指のしびれ、運動障害、歩行障害が出現、増悪した。精査を行ったところ頚椎OPLLと首下がりを認め、これによる頚髄症状と診断した。進行性の脊髄症状であり手術適応と判断しC2-Th11の後方除圧固定術を行った。脊髄症状は改善するも術後6ヵ月より徐々に固定下位の隣接椎間障害が出現した。術後3年でさらに隣接椎間障害が進行し矢状面アライメント不良を認めるも歩行可能であり経過観察中である。
【考察】首下がりには頚椎限局型と胸腰椎型がある。特に胸腰椎型の場合は全脊椎のアライメントを考慮し手術を行わなければいけないが、本症例のように矯正不足の場合固定下位隣接椎間障害が出現する。
25.3椎間ACDF(Anterior Cervical Decompression and Fusion)の頸椎アライメントの検討
 
久留米大学 整形外科学教室
 
横須賀 公章(よこすか きみあき)、佐藤 公昭、山田 圭、森戸 伸治、松尾 篤志、不動 拓真、二見 俊人、平岡 弘二
 
【目的】頸椎の多椎間病変に対する手術適応にははっきりとしたconsensusは無い。そこで今回我々は3椎間ACDFの有用性を検討したので報告する。
【方法】2021年4月から2022年1月までに施行した7例を対象とした。平均年齢55.5歳、男性6例、女性1例。機材はROI-C(ZimVie)を使用した。評価項目は、手術時間、出血量、在院日数、JOAスコア、CL,cSVA,T1S,C2-7cobb angleおよび、局所前弯角、cage subsidence の有無を評価した。
【結果】平均手術時間:130分、平均出血量:28.3g、平均在院日数:17.1日、平均JOAスコア:術前13.2術後14.64、レントゲン学的検討では局所前弯角のみに有意差(p=0.039)を認めた。cage subsidence はインプラント後方設置に多く、また、インプラント破損はなかった。
【考察】今回の結果では頸椎全体のアライメント矯正としての効力は限定的であった。今後、術後アライメントの予測因子を検討する必要がある。
26.当院における頚椎前方固定術後のalignment変化―原因疾患間の比較
 
霧島整形外科病院1)、鹿児島大学 整形外科2)

井尻 幸成(いじり こうせい)1)、田邊 史1)、俵積田 裕紀2)、冨永 博之2)、谷口 昇2)

【目的】今回我々は当院で行った変性疾患に対する頚椎前方固定術の頚椎アライメントの変化を調査し、原因疾患別の比較検討を行ったので報告する。
【対象】2014年11月から2022年10月までに当院で頚椎変性疾患に対し前方固定術を施行した233例をRetrospectiveに調査した。C S M92、C DH30、C SR59、C SA6、O PLL32、K yphosis8、その他6例であった。頚椎側面XPを用いて固定椎間数、術前術後固定椎間角、術前術後C 2-7 角、C2-7角等のパラメーター変化を計測し、原因疾患間で比較検討した。
【結果】CDHとCSRのみ、前方固定術により固定椎間の頚椎前弯が有意に増加していた。この2群においてもC2-7角には術前後で有意な増加はなかった。CSM群のみC2-7角が術後有意に減少していた。
【考察】頸椎前方固定術は原因疾患ごとに異なった経過をたどる。これらを念頭に入れた評価が必要と思われた。
27.当院における頚椎人工椎間板手術の小経験

霧島整形外科病院

井尻 幸成(いじり こうせい)1)、田邊 史1)、俵積田 裕紀2)、冨永 博之2)、谷口 昇2)

【目的】当院では、従来より頚椎椎間板ヘルニアに対しては前方固定術を行ってきたが、2020年から症例を選んで人工椎間板手術を行っている。今回その小経験を報告する。
【対象】対象は、36歳から65歳の4例で女性3例、男性1例である。全例単椎間の頚椎椎間板ヘルニアである。これらの症例に対し、手術成績、術前後のXPをretrospectiveに調査した。
【結果】JOAscoreは、術前平均14.7点が術後平均16.6点と術直後から改善し維持されていた。罹患椎間角は術前平均-0.8度が術後直後平均2度最終調査時平均2.3度、C2-7角は術前平均-1.9度が術後平均3.3度最終調査時平均5.8度であり、罹患椎間もC2-7角も前弯が獲得維持されていた。全例前職に復職しており、満足度は極めて高かった。
【まとめ】頚椎椎間板ヘルニアに対する人工椎間板置換術の短期成績は良好であった。今後、C SR やC SMに適応を広げていける可能性が高いと思われた。
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