26.75歳以上の軸椎歯突起骨折に対する前方スクリュー固定術の治療成績 Study of Nonunion after Anterior Screw Fixation for Odontoid Fractures over 75 years 聖マリア病院 整形外科 神保 幸太郎(じんぼ こうたろう)、井手 洋平、西田 功太、二見 俊人 【背景】軸椎歯突起骨折に対する前方スクリュー固定術は環軸関節の可動域を温存できる術式だが、スクリューの種類や本数に関して明確な基準がない。 【目的】術式をFull thread typeを2本挿入することで骨癒合率が変化するか調査すること。 【対象】2012年1月から2022年4月までに当院で75歳以上の軸椎歯突起骨折Anderson type 2に対し前方スクリュー固定術を行った15例を対象とした。スクリューは全てUCSS(メドトロニック社)を用い、Lag screw typeを1本挿入(L1群)が7例、Full thread typeを2本挿入(F2群)が9例だった。 【結果】骨癒合は術後3-6か月のCTで評価し、L1群が3/7例(43%)、F2群が8/9例(89%)だった(Fisherの正確検定:0.106)。 【考察】先行研究の結果より偽関節の発生はスクリューと体部との間で起こることが示唆されており、スクリューと体部との固定性を強化するためにFull thread typeを2本挿入したところ骨癒合率が増加した。 |
27.高齢者歯突起骨折に対する C1-2 固定の成績 大分大学 迫 教晃(さこ のりあき)、阿部 徹太郎、宮崎 正志 【はじめに】軸椎骨折は頚椎骨折の中でも多くを占めており、また近年高齢化に伴い増加傾向である。今回当院での高齢者歯突起骨折に対するC1-2固定の症例をまとめ報告する。 【対象】対象は2016年から2021年で当院にて歯突起骨折に対しC1-2固定を施行した高齢者8例。男性5例女性3例、平均年齢74.8歳(70-90)、平均観察期間17.1週、Anderson分類Type2が7例、Type3が1例。これらの症例の術前後歩容、平均手術時間、出血量、周術期合併症、離床開始時期、骨癒合の有無を評価した。 【結果】外傷前は全例独歩であり、多発外傷の2例以外は全員歩行可能となり、独歩5例、歩行器歩行1例であった。平均手術時間145分、平均出血77.5ml、周術期輸血を要したのは多発外傷の2例のみであり、1例は術後8ヶ月で頚髄症の発症にて椎弓形成術を施行した。多発外傷以外の6例は術後2~4日目に離床可能であった。術後半年以上フォロー可能であった4例は全例で骨癒合を認めた。 【結語】軸椎骨折に対するC1-2固定は高齢者でも周術期合併症が少なく、早期に離床可能であり有効な手段である。 |
28.軸椎歯突起骨折に対して保存治療を行った症例の治療成績 高知県立幡多けんみん病院 整形外科1)、高知大学 整形外科2) 葛西 雄介(かさい ゆうすけ)1)、喜安 克仁2)、溝渕 周平2)、青山 直樹2)、田所 伸朗2)、池内 昌彦2) 【はじめに】軸椎歯突起骨折の治療方法は手術治療と保存治療があるが、高齢者の場合、全身状態などから保存治療となることもある。今回70歳以上の歯突起骨折に対して保存治療を行った症例に対して治療経過を報告する。 【調査項目】症例は6例(男4例・女2例、受傷時平均年齢80.8歳)を後ろ向きに調査した。受傷機転、神経所見、Anderson 分類、治療方法、骨癒合の有無、合併症を調査した。 【結果】受傷機転は転落4例、転倒1例、その他1例であった。1例にFrankelDの麻痺を認めた。Anderson分類はtypeⅡ 3例、typeⅢ 3例であった。全例で頚椎カラーを装着したが、経過中3例でハローベストの併用あるいはSOMI装具への変更があった。骨癒合は3例で得られていた。合併症は認めなかった。 【考察】高齢者の歯突起骨折は、全身状態などから術後合併症リスクを考えて保存治療を行うこともある。今回の症例では保存治療で骨癒合は得られにくいものの、臨床的な問題は起こらず、保存治療も一つの選択肢であると思われた。 |
29.後期高齢者の上位頸椎外傷 鳥取大学 整形外科 藤原 聖史(ふじわら さとし)、谷島 伸二、三原 徳満、武田 知加子、吉田 匡希、永島 英樹 【目的】後期高齢者の上位頚椎損傷に対する保存療法の治療成績を後方視的に検討した。 【方法】対象は2010年1月から2022年4月までに、受傷時年齢が75歳以上で、保存療法を行った22例(男性5例、女性17例、平均年齢84.8歳)である。調査項目は、年齢、高位及び骨折型、経過観察期間、骨癒合の有無とした。 【結果】80歳未満が3例、80~89歳が16例、90歳以上が4例であった。歯突起骨折が16例(AndersonⅡ:7例、Ⅲ:9例)、軸椎椎体骨折が2例、ハングマン骨折が2例、環椎骨折が3例であった。3ヶ月以上フォローアップをできたのが15例、その内偽関節は6例であった。経過観察中に神経症状や不安定性が進行し手術に至ったのが2例あった。 【考察および結論】高齢者の上位頚椎損傷は歯突起骨折が多く、Ⅱ型は全例骨癒合を認めなかった。偽関節例でも痛みは比較的良好であることが多いため、術後の合併症リスクを考慮して保存療法をまずは選択してもよい。 |
30.後期高齢者頚椎損傷の急性期手術介入のタイミングにコロナ禍は影響したか 岡山大学病院 整形外科 魚谷 弘二(うおたに こうじ)、植田 昌敬、志渡澤 央和、小田 孔明、鉄永 倫子、三澤 治夫、尾﨑 敏文 【目的】今回コロナ禍が頚椎損傷の治療タイミングに影響したかどうか、後期高齢者症例を中心に検討した。 【方法】2016年4月から2022年3月で当院救急部に搬送された症例のうち、頚椎頚髄損傷の診断名がついた116例を対象として緊急手術症例を抽出し、手術待機時間、骨折型、麻痺、在院日数などについて検討した。 【結果】緊急手術症例は29例(平均年齢64歳)であった。このうち後期高齢者は10例であった。手術までの待機時間は全体で10.1時間、後期高齢者では10.4時間であった。コロナ禍の前後分けると、待機時間は全体で各々8.9,11時間で、後期高齢者群では12,9.7時間でいずれも有意な差は認めなかった。骨折型はAO typeA 3例、B5例、C2例であった。麻痺はASIA A2例、B3例、C4例、E1例であった。平均在院日数は13.7日であった。 【考察および結論】当院では頚椎損傷に対して早期に安静解除をできることを目標としており、今回の検討では平均10時間で手術を行えていた。コロナ禍ではPCR検査などの影響で待機時間が長引くことが予想されたが今回の検討では症例が少ないが差を認めなかった。 |
31.左椎骨動脈閉塞を伴った頸椎脱臼骨折に対し血管内治療及び整復固定術を施行した一例 九州労災病院 整形外科 上妻 隆太郎(こうづま りゅうたろう)、 吉本 昌人、上田 修平、樽角 清志、 加治 浩三、今村 寿宏、上森 知彦、三浦 裕正 頸椎脱臼骨折に椎骨動脈閉塞が合併した一例を経験したので若干の文献学的な考察を加え報告する。 症例は60代男性、自宅階段からの転落受傷。強い頸部痛と両C5領域を中心に痛覚過敏があり四肢運動麻痺は認めなかった。単純レントゲン、CTではC3椎体の前方転位とC3/4左椎間関節の脱臼、C4左上関節突起~左横突孔に至る骨折、MRIではT2強調像でC3/4椎間板高位に髄内高信号、 広範囲の後方靭帯損傷を認めAllen-Ferguson分類 distractive-flection injury(stage2)と診断した。 造影CT・血管造影検査で左椎骨動脈はC3上縁~C4下縁で完全閉塞していた。脳血管内科・脳外科と協議した結果、脱臼整復による血栓症のリスクを考慮し左椎骨動脈コイル塞栓術の施行後に後方整復固定術を施行した。 術後は血栓症を含め合併症なく経過し自宅退院となった。 |