第96回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題Ⅰ)


1.AO分類タイプA-4相当のOVFに対するVertebral Body Stentingの短期成績

シムラ病院

村田 英明(むらた ひであき)

【目的】OVFのうち椎体全体が破壊されているAO分類typeA-4(A-4)相当の骨折に対しては脊椎インプラントを用いた矯正固定手術の適応とされている。しかしインプラントを用いた固定術は高齢、重度粗鬆骨ゆえの合併症が多いのも事実である。一方で実際のBKP手術では、四方の壁骨折部位からセメント漏出の可能性は常に伴う。VertebralBody Stenting(VBS)はステント設置により、セメント漏出を防止しながら圧入するのに有用だと考えた。本研究の目的はA-4相当のOVFに対するVBS治療成績を検討する事である。
【対象・方法】患者家族の同意を得て2022年より施行したVBS症例のうち、A-4OVFに対して行った21例。平均年齢79歳(52~95歳)。
【結論】高齢者の脊椎破裂骨折に対するVBS手術は安全で有効だった。続発性骨折はあったが、インプラントフェイラーに比べれば、高齢者の身体的負担、侵襲度は少ない。インプラント使用を回避すべき重度粗鬆骨においては、考慮すべき方法であると思われた。
2.高度椎体圧潰および高度不安定性を伴う骨粗鬆症性椎体骨折に対して側臥位前屈位でロッド締結し意図的に後弯位固定した6症例についての検討
 
九州労災病院

吉本 昌人(よしもと まさと)、上田 修平、樽角 清志、加治 浩三、今村 寿宏、上森 知彦、上妻 隆太郎、三浦 裕正
 
【はじめに】高度な椎体圧潰と不安定性を認める骨粗鬆性椎体骨折に対する椎体形成術や後方固定術では、術後矯正損失に伴うインプラント脱転など合併症が問題となる。
【目的】われわれは、術後矯正損失を見越して意図的に後弯位で固定するため、側臥位前屈位でロッド締結する手術を行ってきた。今回、その6症例につき報告する。
【対象と方法】全例女性6例、平均81歳であった。仰臥位~坐位側面Xp像で25°以上の局所不安定性を認めるものを対象とした。手術方法は、オープンでPSを挿入した後に症例に応じて椎体形成や除圧を追加、創部を仮閉創し、体位変換して側臥位前屈位でロッドを締結した。これらにつき、画像所見や臨床所見など術前/術後2週/術後1年時点で評価した。
【結果】術後1年時点で全例にインプラント脱転による再手術や新規椎体骨折なく、全例が杖で外出していた。
【考察】本術式は、矯正損失によって起こる様々な問題を防ぐことができた。後弯位固定での弊害もなく、適応を選べば有用な術式であると思われた。
3.高齢者の骨粗鬆症性椎体骨折に対するSynfl ate® Kyphoplasty Balloon を用いた BalloonKyphoplasty の有用性
 
社会医療法人青洲会 福岡青洲会病院 整形・脊椎外科1)、 自衛隊福岡病院 整形外科2)

酒井 翼(さかい つばさ)1)、平本 剛士1,2
 
高齢者の骨粗鬆症性椎体骨折に対するBalloonKyphoplasty(BKP)は低侵襲でかつ早期除痛、早期ADL回復が期待できる手術法として広く認識されている。しかし、罹患椎体の脆弱性や、安全に手技を行うために犠牲となる放射線被曝など、術中配慮すべきことはことのほか多く、術者にかかる心身への侵襲は決して低くはない。
近頃本邦において使用可能となったSynfl ate® Kyphoplasty Balloon(DePuy Synthes社)はトロカーを3.5mmと従来のイントロデューサーより0.7mm細くすることでニードルとイントロデューサー、ボーンフィラーデバイスの三役を一体化しているのが特徴で、ガイドワイヤーを介したデバイスの入れ替え操作が不要となっている。
当院で5例に使用し、手術時間の短縮ばかりか、術中操作における前方穿破の危険が非常に少なく、さらにその確認のために要する放射線被曝も低減されていた。
特に前壁損傷が認められる例でもストレスなく安全に施行でき、患者だけでなく術者にとっても非常に有用なシステムである。
4.胸腰椎移行部骨粗鬆症性椎体骨折に対する手術成績の検討 ― PVP(HA)+MISt vs BKP+PF ―
 
九州労災病院
 
上田 修平(うえだ しゅうへい)、樽角 清志、加治 浩三、今村 寿宏、上森 知彦、吉本 昌人、上妻 隆太郎、三浦 裕正
 
【はじめに】昨今、骨粗鬆性椎体骨折に対する椎体形成術や後方固定術は標準的な術式となっているが、行われる術式は施設や術者間によって違うのが現状である。今回われわれは、HAを用いたPVP+MISt(H群)とBKP+PF(B群)とを比較検討したため報告する。
【対象と方法】2019年4月~2021年3月までに当院で手術を行ったH群6例、B群5例を対象とした。両群で年齢、罹患椎体、手術時間、出血量、新規椎体骨折、再手術、局所後弯角(術前、術直後、術後1年)、手術矯正角度について調査し、t検定を用いて両群を比較検討した。
【結果】以下H群vsB群とする。平均年齢は79歳vs81歳(NS)、手術時間は82分vs133分(P< 0.05)、出血量は40mlvs130ml(P<0.05)、局所後弯角は術前24°vs27°(NS)、術直後4°vs0°(NS)、術後1年12°vs10°(NS)、手術矯正角度は20°vs27°(P<0.05)であった。新規骨折はH群に1例とB群に2例認めた。再手術はH群に1例認めた。
【考察】A群の方が低侵襲であった。B群の方が矯正力に優れていたが、矯正損失も大きかった。
5.骨粗鬆症性椎体骨折に対する後方手術の手術成績
 
神戸市立医療センター西市民病院 整形外科
 
山根 逸郎(やまね いつろう)、西口 滋、布施 謙三、藤原 弘之、橋村 卓実、久保田 雅哉
 
【目的】椎体形成術だけでの対応が困難な症例に対して、以前は①従来群:open手技で椎弓根スクリュー(PS)を使用する後方固定と骨移植術を基本とした手術を行い、その後②経皮群:経皮的椎弓根スクリュー(PPS)を使用する後方固定術を基本とした手術に変化し、近年では③BKP +後方群:BKP と後方固定術(PPS か棘突起プレートを使用)を併用する手術を行うようになった。それぞれの成績を比較した。
【方法】従来群は22例(手術時平均年齢 78.6歳)、経皮群は15例(手術時平均年齢73.2歳)、BKP+後方群は14例(手術時平均年齢 83.1歳)だった。臨床症状の推移、手術侵襲、インプラントの不具合・再手術の有無を検討した。
【結果】臨床症状はいずれの方法でも概ね改善した。手術侵襲は経皮群とBKP+後方群が少なかった。インプラントが脱転した症例は従来群が7例、経皮群が2例だった。再手術を行った症例は従来群が7例、経皮群が5例、BKP+後方群が2例だった。
【考察と結語】3種の手術方法のうち、固定椎間が少ないBKP+後方固定術がより低侵襲で安全な手技であると考える。
6.ドイツ整形災害外科学会による骨粗鬆症性椎体骨折スコアリングシステムの有用性
 
鹿児島市立病院、鹿児島日赤病院、鹿児島大学病院
 
八尋 雄平(やひろ ゆうへい)、嶋田 博文、山元 拓哉、坂本 光、河村 一郎、冨永 博之、谷口 昇
 
【目的】ドイツ整形災害外科学会が骨粗鬆症性椎体骨折のスコアリングシステムを報告し、5 点以下が保存、6 点で保存または外科治療、7 点以上で外科治療を推奨。保存治療と外科治療の患者にスコアリングシステムをあてはめ有効性について検証した。
【方法】2018年4月から2022年8月までで保存、外科治療を行った患者が対象。保存治療92例、外科治療22例。
【結果】総合点は保存治療群4.3、外科治療群8.6 で、有意差があった。手術適応の7点以上は保存治療で13%、外科治療で82%であり有意差があった。保存治療群で6点以下と7点以上を比較すると疼痛残存が6点以下で30%、7点以上で83%、神経障害残存が6点以下で2.5%、7点以上で25%、単独での離床困難は6点以下で36%、7点以上で100%であった。
【考察】外科治療を必要とした症例の多くが7点以上であり、妥当な目安と考えらえる。一方7点以上で保存治療とした場合は疼痛の残存、神経障害、離床が進んでおらず、その後のADLの低下が危惧された。
【結論】スコアリングシステムは簡便に評価でき、有用な指標になると考えられる。
7.骨粗鬆症性仙骨脆弱骨折の診断における腰仙椎MRIの有用性
 
JA徳島厚生連吉野川医療センター 整形外科
 
長町 顕(ながまち あき)、宮武 克年、重清 晶太、百田 佳織、太田 耕平、酒井 紀典

【はじめに】仙骨脆弱性骨折初期症状は腰椎疾患を疑わせるため、 初診時に腰仙椎MRIを撮影されることが多い。Tamakiらにより仙骨脆弱性骨折では腰仙椎MRIで第2仙椎に輝度変化が生じることが報告されている。
【目的】本研究の目的は骨粗鬆症性仙骨脆弱骨折の診断における腰仙椎MRIの有用性を再検証することである。
【対象及び方法】対象は仙骨脆弱性骨折と診断された42例のうち、初診時に腰仙椎MRIを撮影していた29例である。男性4例、女性25例、平均年齢81歳(49~97歳)であった。初診時腰仙椎MRI矢状断像で第2仙椎に輝度変化が生じているかどうかを検討した。
【結果】29例全例に第2仙椎の輝度変化が観察された。輝度変化の内訳は、T1W-Iで低輝度29例(100%)、T2W-Iで高輝度11例(13.8%)、低輝度14例(48.3%)高輝度と低輝度の混在4例(13.8%)、STIRで高輝度29例(100%)であった。
【考察】腰仙椎MRIで認められる第2仙椎の輝度変化は仙骨脆弱性骨折診断に有用であった。
8.当院における骨粗鬆症性新規椎体骨折に対する積極入院治療の成績
 
中国労災病院整形外科、広島大学整形外科
 
月坂 純也(つきさか じゅんや)、濱﨑 貴彦、田中 碩、石橋 沙織、中邑 祥博、中﨑 蔵人、堀 淳司、藤本 英作、益田 泰次、笹重 義朗、中前 稔生、亀井 直輔

【はじめに】骨粗鬆症性椎体骨折(以下OVF)保存加療の問題点に日常生活動作(以下ADL)低下が挙げられるが、当院では体幹ギプス固定し入院、床上安静とし、NRS 3以下で離床開始する保存加療を行いその治療成績を報告する。
【対象と方法】2020年6月から当科、救急外来を受診し新規OVFで緊急入院となった42例(男性18例、女性24例、平均83.0歳)を対象とした。画像所見、骨密度、総椎体骨折数、臥床期間、受傷前および最終調査時のADLを評価し、骨癒合不全リスク・重症骨粗鬆症の有無で検討した。
【結果】びまん性特発性骨増殖症8例、後壁・椎弓根損傷4例、MRI T2高信号限局型11例、T2低信号広範型17例、YAM値70%未満は腰椎15例、大腿骨21例、総椎体骨折数平均2.0椎体、臥床日数平均9.0日だった。 骨癒合不全リスクの有無では、座位Xpの圧壊率やMRI信号変化で、重症骨粗鬆症の有無では骨密度および総椎体骨折数で有意差を認めた。調査時のADLが非自立へ低下したものに有意差を認めなかった。
【考察】約9日の臥床期間で最終調査時にADLが非自立へ低下することないため本治療法はADL保持の観点からも良好と考える。
9.骨粗鬆症性椎体骨折に対し広島県呉市全域で共通の地域連携パス導入に向けて
 
中国労災病院、呉市地域保健対策協議会 骨粗しょう症地域包括医療体制検討小委員会
 
濱﨑 貴彦(はまさき たかひこ)1,2)、沖本 信和2,3)、白川 泰山2,4)、寺元 秀文2,5)、中川 豪2,6)、水野 俊行2,7)、菊地 剛5)、力田 高徳2,8)、笹重 善朗1,2)

【はじめに】骨粗鬆症性椎体骨折に対し、人口21万人の当市で共通の地域連携パス導入に向けての取り組みについて報告する。
【経過】2019年6月より当市の急性期病院、回復期病院、クリニックの有志が意見交換を始めた。骨粗鬆症に対して薬物治療の開始あるいは調整を、椎体骨折に対して急性期病院での入院/安静と回復期病院へのスムーズな転院をベースに検討した。コロナ禍(2020年9月から2021年3月)ではZoomを用いて会議を継続し、作成した素案を2021年4月に開催された地域保健対策協議会骨粗しょう症地域包括医療体制検討小委員会で行政、医師会、歯科医師会、薬剤師会に報告した。2021年11月には地域連携に携わる医療従事者向けの説明会で周知し、2022年4月の運用開始を目指していたが、登録医療機関の募集、運用に係るアンケート調査を行い、2022年9月の開始を検討している。
【考察】2022年4月の診療報酬改定で大腿骨近位部骨折に対する継続的な二次性骨折予防に係る評価が新設されたが、今後は骨粗鬆症性椎体骨折に対する地域連携、二次性骨折予防が重要で注目を集めていくものと思われる。
10.高齢者臨床的脊椎椎体骨折の地域内発生数・発生率の経時変化~広島県呉市におけるレセプトデータを利用した解析(第3報)~
 
呉中通病院、 呉市地域保健対策協議会、骨粗しょう症地域
 
中川 豪(なかがわ つよし)、濱﨑 貴彦2,3)、沖本 信和2,4)、白川 泰山2,5)、寺元 秀文2,6)、水野 俊行2,7)、力田 高徳2,8)、要田 弥生2,9)、笹重 善朗2,3)

【目的】過去2回本学会で広島県呉市における臨床的椎体骨折の発生率を行政との連携によるレセプトデータから解析し報告した。今回さらに2020年までデータを加え , 臨床的椎体骨折の発生数 , 発生率の経時変化を解析したので報告する。
【方法】対象は2015-2020年に当市で国保・後期高齢者被保険者のレセプトデータから傷病名に椎体骨折があり、かつ処置/手術/入院のいずれかがあるものを臨床的椎体骨折とみなし検討した。 
【結果/考察】臨床的椎体骨折は、65歳以上の発生数、1000人あたりの発生数とも、2018年の1431、21.3をピークに増加から減少に転じている。椎体/大腿骨近位部の骨折数比も2018年の2.0をピークに上昇から低下に転じ、2019年以降さらに大きく低下した。5歳毎の年代別発生率経時変化では、全年代層でピークの後に低下を認めるが、高い年代層ほどピークの出現が早く、85~89歳で2017年、80~84・75~79歳で2018年、70~74・65~69歳で2019年でのピークを認めた。当市の高齢化傾向は約20年後の日本全体の予想値に近似しており、今回の結果は将来の日本の椎体骨折発生傾向の推察に有効とおもわれる。
PAGE TOP