| 12.頚椎症性脊髄症における術後改善予測因子 久留米大学病院 整形外科 不動 拓眞(ふどう たくま)、佐藤 公昭、山田 圭、横須賀 公章、吉田 龍弘、森戸 伸治、松尾 篤志、志波 直人 【背景】頚椎症性脊髄症は上下肢に運動障害を引き起し、手術療法が選択されている。 【目的】当院にて頚椎症性脊髄症に対して、手術加療及び周術期リハビリテーション介入行った症例における術後改善予測因子を検討した。 【対象と方法】対象は、2015年1月から2020年12月に頚椎症性脊髄症に対して椎弓形成術及びリハビリテーション介入を行った119例とした。 神経学的転帰は日本整形外科学会頚髄症治療成績基準(JOA score)を用い、改善率は平林法計算式(改善率=(治療後点数-治療前点数)×100/(17-治療前点数))にて≧70%(改善群)と<70%(非改善群)の2群に分けた。 入院中に術前と退院時の身体機能(握力、開眼片脚起立時間、下肢筋力、大腿周囲径、下腿周囲径、Timed Up and Go(TUG)Test、Simple Test for Evaluating hand Function(STEF)、10m歩行テスト)を計測し、2群間で身体機能のそれぞれ項目について比較した。 【結果】男 性85人、女性34人、手術時平均年齢4歳、平均観察期間は15.2ヶ月であった。 改善群は非改善群に比較して有意に術前のTUGが短かったが、その他の身体機能の項目では有意差はなかった。 【考察】頚椎症性脊髄症における術後改善予測因子は術前のTUGであった。このことから、身体機能が低下する前に、早期の手術することで術後の経過が良くなる可能性が示唆された。 |
| 13.健康寿命を超えた後縦靭帯骨化症手術の傾向と予後 久留米大学医学部整形外科学講座 森戸 伸治(もりと しんじ)、佐藤 公昭、山田 圭、横須賀 公章、枦元 佑大郎、松尾 篤志、不動 拓眞、平岡 弘二 【背景】本邦の2016年平均寿命は女性87歳/男性81歳、同年の健康寿命は女性75歳/男性72歳であった。健康寿命を超えた手術症例が散見されるが、その予後に関する報告は少ない。 【目的】本研究の目的は、健康寿命を超えた後縦靭帯骨化症手術症例の患者背景と予後を調査することである。 【方法】2016年4月から2021年3月までに当院で手術を施行した後縦靭帯骨化症58例(女性11例/男性47例 / 平均年齢62±11歳)を対象とした。2016年に厚生労働省により行われた人口動態調査の結果を参考に、手術年齢が健康寿命より高い群(高齢群)と低い群(若年群)に分類し、患者背景と術後JOA推移(17点法)を比較。 【結果】高齢群は12例(女性0例/男性11例)、若年群は49例(女性11例/男性36例)。術前麻痺、術後麻痺に2群間の有意差はなかった。JOA推移(術前/12か月/24か月以降)は、高齢群11±2/12±2/11±2、若年群11±3/13±3/13±1。 【結語】健康寿命を超えた後縦靭帯骨化症手術は全例男性であった。術前身体機能は若年群と同等であるが、長期予後は不良である可能性が示唆された。 |
| 14.高齢者の上位頸椎疾患に対する手術成績 一信会 大分整形外科病院 吉村 陽貴、大田 秀樹、木田 吉城、井口 洋平、巽 政人、田原 健一、柴田 達也、三尾 亮太、木田 浩隆、竹光 義治 【はじめに】変形性環軸関節症、歯突起後方偽腫瘍、環軸椎亜脱臼などの上位頚椎疾患に対し保存療法が無効であれば、高齢者においても手術療法を必要とする場合がある。今回われわれは、上位頸椎疾患に対して手術を行った高齢者の治療成績について調査したので報告する。 【対象】過去10年間に、当院で上位頸椎疾患に対して手術療法を行った29例中、6カ月以上の経過観察が可能であった、75歳以上の10例を対象とした。疾患は変形性環軸関節症4例、歯突起後方偽腫瘍4例、環軸椎亜脱臼2例で、手術はC1/2固定7例(うちMargel法4例)、O-C固定が3例であった。10例全例において骨癒合が得られた。周術期にせん妄や不整脈などの合併症を生じたが、重篤な合併症は認めなかった。 【考察】今回手術治療を行った上位頸椎疾患は、ベースに不安定性があり症状を誘発している。高齢者の場合、周術期の合併症が懸念されるが、保存療法が無効な場合は積極的な手術療法が求められる。 |
| 15.術後前屈位の後弯変形は頚椎症性脊髄症に対する椎弓形成術の転帰に影響する 山口大学 整形外科 舩場 真裕(ふなば まさひろ)、今城 靖明、鈴木 秀典、坂本 拓哉、西田 周泰、坂井 孝司 【目的】術前の患者背景、画像パラメータ、疾患の重症度に加え、術後の頸椎アライメントの変化が頚椎症性脊髄症(CSM)に対する椎弓形成術の1年後の転帰に影響を与えるか検討した。 【方法】椎弓形成術を受けた患者103名を対象とした。術前と術後(1年)JOA スコア、頚椎アライメント、バランスを評価した。JOAスコアの改善率(RR)が 50%以上の患者を良好群とした。良好群に関連する因子を多変量解析した。 【結果】JOAスコアの平均RRは47.5%、中立位での頚椎前弯の消失は5.5度であった。術前のC2-7角度は有意な差はなかった。多変量解析では、良好群に関連する有意な因子は、若年齢(OR:0.75、95% CI:0.59-0.96)、短い罹病期間(OR:0.94、95% CI:0.89-0.99)、術後の大きな前屈位C2-7角(OR:1.47、95% CI:1.1-1.95)であった。 【考察と結語】後弯変形した場合は水平視のために中間位ですでに代償が働く一方で、前屈位は代償の影響が排除できるためより直接的な指標になったと考えられた。高齢で罹患期間が長いことに加え、術後の屈曲位の後弯の程度が治療成績に悪影響を及ぼすことが示唆された。 |
| 16.75歳以上における中下位頚椎疾患に対する頚椎前方固定術の治療成績 長崎労災病院 整形外科 貞松 毅大(さだまつ たけひろ)、馬場 秀夫、山田 周太、今井 智恵子、笠原 峻、郷野 開史、小西 宏昭 【はじめに】頚椎前方除圧固定術(ACDF)は標準的な手術方法の1つだが、高齢者では基礎疾患も多く骨脆弱性も増すため合併症の増加が懸念される。75歳以上の中下位頚椎疾患に対して行なったACDFの術後成績について検討した。 【対象】2014年1月~2021年12月に外傷・感染を除く中下位頚椎疾患に対してACDF行なった 22症例。男性 14 例、女性 8 例、平均年齢 77.9 歳(75-82)を対象とした。内訳は頚椎症性脊髄症9 例,頚椎症性神経根症 3例、頚椎ヘルニア 5 例、頚椎症性筋萎縮症 4 例、後縦靭帯骨化症 1 例だった。 【方法】Cage の沈み込み、Screw の緩み、周術期合併症、再手術の有無について検討した。 【結果】周術期の合併症は術後血腫が 1 例。再手術を要した症例は、頸髄症の症状進行、及び術後症状残存のため再手術を行なった症例がそれぞれ 1例。Cage の沈み込みは 8 例に認め再手術を要した症例が 1 例、Screw の緩みは 7 例に認め再手術を要した症例はなかった。 【まとめ】骨脆弱性のため Cage の沈み込み、Screw の緩みを認めた症例はあったが、多くは術後成績も良好で高齢者においても有用な術式と思われる。 |
| 17.我が国における超高齢(80歳以上)頚髄損傷患者の現状と問題点 労働者健康安全機構 綜合せき損センター 整形外科 佐々木 颯太(ささき そうた)、益田 宗彰、前田 健、河野 修、坂井 宏旭、森下 雄一郎、林 哲生、久保田 健介、横田 和也、大迫 浩平、伊藤田 慶、畑 和宏 【背景】高齢者の新規頚髄損傷患者は年々増加している。本研究の目的は、頚髄損傷患者における高齢化の問題点を明らかにすることである。 【対象と方法】2000年1月より2019年12月までの間、受傷後14日以内に当センターに入院となった、60歳以上の外傷性頚髄損傷患者を対象とした。入・退院時の患者年齢、ASIA Impairment Sacle : AIS、ASIA Motor Score(MS)、SCIMを調査した。対象のうち80歳以上の超高齢者が占める割合、各項目の改善に対する年齢の影響を検討した。 【結果】対象患者数は485名(男 391:女 94)であり、うち 16.3%が80歳以上であった。入院時AISはA:142、 B:62、C:159、D:122 であり、退院時に1段階以上の改善を認めた割合は60-70代で有意に高かった(56.9% vs 33.9%)。MS、SCIMの平均改善度も同様であった(42% 、45% vs 26%、18%)。自宅退院率は80代以上で有意に低かった(46% vs 18%)。 【考察】超高齢者では基礎身体能力・意欲の低下や基礎疾患の存在が、リハビリや社会復帰を阻害していると考えられる。また家族の高齢化や福祉に関する社会的資源の欠如が自宅復帰率の低下につながっていると考えられた。 【結語】超高齢頚髄損傷患者の自宅復帰率は年々低下しており、社会保障制度の整備がなされるべきと思われた。 |
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