| 6.胸腰椎移行部遅発性神経麻痺に対する低侵襲手術:BKP+経皮的Hook制動の試み 九州労災病院 上妻 隆太郎(こうづま りゅうたろう)、土井 俊郎、荒武 佑至、有馬 準一 胸腰椎移行部遅発性神経麻痺の手術は、日本での多施設調査によると椎体形成術+後方固定術が多く行われているが、インプラントの緩み、周術期合併症、固定端/隣接骨折、手術侵襲など問題も多い。遅発性神経麻痺例では動態不安定性を減少させる必要があるためBKPに加え経皮的椎弓根スクリューを追加する方法が報告されているが、後弯部位ではスクリューの引き抜けが問題となる。我々は2021年に骨粗鬆症性椎体骨折に対するBKPを補強する方法として経皮的後方フック制動術について報告した。今回、胸腰椎移行部遅発性神経麻痺に対するBKP+経皮的制動術の成績を調査した。対象症例17例、平均追跡期間8ヶ月、平均年齢83.6才、平均手術時間81分、平均出血量14mlであった。17例中16例で神経症状の改善を得た。経過観察中インプラントの脱転など不具合は認めなかった。固定端/隣接椎体骨折を4例に認めた。BKP+Hook制動は胸腰椎移行部遅発性神経麻痺に対する治療の選択肢になりうると考えた。 |
| 7.びまん性特発性骨増殖(DISH)を伴う骨粗鬆性椎体骨折はBKPで治療可能か JA 広島総合病院 土川 雄司(つちかわ ゆうじ)、山田 清貴、橋本 貴士、平松 武、水野 尚之、宇治郷 諭、松島 大地、藤本 吉範 【背景と目的】びまん性特発性骨増殖(以下DISH)を伴う骨粗鬆性椎体骨折(以下OVF)に対する治療として固定術が選択される傾向にある一方、BKPを行った報告も散見される。DISHを合併したOVF患者に対し行ったBKPの治療成 績を調査し、BKPの有用性および限界について検討すること。 【対象と方法】2011年1月から2017年12月までに当院でBKPを施行したOVF患者801例のうち、CTでDISHが確認できた77症例(9.6%)。その中で術後6ヶ月のCTまたはレントゲンで骨癒合の評価が可能であった71例について後ろ向きに調査した。調査項目は年齢、性別、罹病期間、癒合椎とOVFの位置関係、術前の椎体異常可動性、術前後の VAS、ODI。術後6ヶ月でCTまたは座位と臥位のレントゲンで骨癒合が確認できた群(癒合群)および骨癒合が遷延していた(遷延群)の2群に分け、各調査項目についての比較を行った。 【結果】71症例のうち癒合群は42例(59.2%)、遷延群は29例(40.8%)であった。癒合群および遷延群の比較において、術前の椎体異常可動性が癒合群で平均5.9°であったのに対し、遷延群で平均14.7°と有意に高かった。 【考察】DISHを伴うOVFの治療に際し、固定術が必要との報告もあるが、術前の椎体異常可動性が少ない症例に対してはBKPで対応可能であった。 |
| 8.高齢者脊柱管狭窄症に対する全脊椎内視鏡手術 -その有用性と問題点についての検討 北九州市立医療センター 整形外科 吉兼 浩一(よしかね こういち) 加齢変化に伴う腰椎疾患としては腰部脊柱管狭窄症が最も一般的で、高齢者数の増加に伴い手術療法に至る例も増加傾向にある。当院では同疾患に対して全内視鏡下片側進入両側除圧術(LE-ULBD:lumbar endoscopic unilateral laminectomy for bilateral decompression)を第1選択としている。高齢者は呼吸器疾患、循環器疾患を併存し ていることも多く予備力に乏しく、また周術期合併症を抑えるためにも可能な限り低侵襲手術が望まれる。術後安静と活動制限は回復を遅らせる因子となり、現在本術式では周術期の尿道カテーテル留置を行わず、麻酔覚醒後3時間での坐位起立歩行再開を後療法としている。当院で2014年5月から2022年3月までに腰部脊柱管狭窄症に対するLEULBD898例の内75歳以上の高齢者に対する手術は369例(男性165例、女性205例、手術時平均年齢80.05歳)を占めた。2年以上経過観察可能であった210例を対象に後ろ向きに調査した。調査項目は術前最終調査時のNRS,JOABPEQ, Macnab評価で、すべての項目で改善が得られた。硬膜損傷6例。一過性の下肢筋力低下増悪2例。併存症の増悪例は認めなかった。LE-ULBDは有用な術式として選択されうるものである。 |
| 9.神経根症状様の下肢痛を有する脆弱性仙骨骨折の検討 総合せき損センター 岡口 芽衣(おかぐち めい)、林 哲生、横田 和也、久保田 健介、森下 雄一郎、益田 宗彰、坂井 宏旭、河野 修、前田 健 【はじめに】仙骨骨折の患者が腰痛や下肢痛を訴えることが知られている。高齢者では骨脆弱性を背景として明らかな受傷機転なく骨折を生じ、変性疾患との鑑別が必要となることがある。 【目的】神経根症状様の下肢痛を有する脆弱性仙骨骨折の骨折型と下肢症状の関係を明らかにする。 【対象と方法】神経根症状様の下肢痛を呈した脆弱性仙骨骨折症例15例を検討した。受傷機転、骨折型、下肢痛の部位、腰部脊柱管狭窄所見の有無を検討した。 【結果と考察】骨折型はDenis分類zoneⅡまたはzoneⅢであり、L5神経根症状様の下肢痛を有する症例ではいずれも骨折線が仙骨翼に及んでいた。S1神経根症状様の下肢痛を有する症例では椎間孔に骨折線が及んでいた。腰部脊柱管狭窄所見は10例に存在し、下肢痛の原因としての仙骨骨折の見落としをしないよう注意が必要である。 |
| 10.腰椎除圧術後MOBに対する再手術方法としてのOLIFの有用性について シムラ病院 整形外科 村田 英明(むらた ひであき) 腰部脊柱管狭窄症や変性辷り症に対して除圧術施行後、変性側弯、辷りの増大などで再手術が必要になった時、再手術方法の一つとして固定術がある。以前はPLIFが主な手術方法であったが、OLIFはより低侵襲な固定方法である。OLIFの利点は、癒着瘢痕化した術野を触ることなく、間接的除圧が期待されることである。OLIFは再手術時にも、その目的を果たしているのか、否か、再手術OLIFの術後成績を調査したので報告する。 対象は16例。再手術時平均年齢は71歳、男性5例、女性11例。前回までの手術回数は平均 1.5回(1~7回)、前回最終手術からの期間は平均5.8年。今回OLIF手術に至った原因(重複)は側方辷りや椎間板のwedgingを含めた変性側弯6例、後方辷り等(不安定性)の増大6例、ヘルニアの再発・取残し3例、DISH下端の除圧術後の再狭窄および不安定性の増大2例、再狭窄もしくは助圧不足5例など。 【結論】腰椎除圧術後MOBに対するOLIFの術後成績は良好で、OLIF手術による間接的除圧の有用性が示された。 |
| 11.高齢者における脊柱管狭窄症手術の現況と問題点 JCHO 九州病院 整形外科 土屋 邦喜(つちや くによし)、大森 裕巳 【目的】高齢者脊柱管狭窄手術における現況、問題点の検討。 【対象および方法】脊柱管狭窄症に対する初回除圧術、フォロー24か月以上で85歳以上16例をH群、同時期で年齢が 75から85未満の125名をL群として適応された術式、成績、併発症を検討した。 【結果】一椎間除圧の割合はH群で 62.5%、L群で68%であった。JOAスコアの改善はH群でやや低く、L群でJOA fullとなった症例は17例(13.6%)あったがH群ではなかった。症状の改善不良あるいは再悪化はH群で1例(6.2%)、L群で6例(4.8%)に認められた。再悪化の要因は狭窄解除不十分1例、外側病変2例、cyst1例、ヘルニア1例、不明2例であった。 【考察】高齢者は生物学的脆弱性のため可能な限り手術侵襲を抑える一方で多発性狭窄病変を有するケースも多く、手術レベルの決定に難渋することもある。今回の調査で高齢者のLCS手術においても単椎間除圧の適応はそれなりに存在し、その臨床経過は比較的良好であることが示された。 |
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