| 10.後弯と前方すべりによる脊髄動的変化と神経症状に与える影響 山口大学医学部附属病院 整形外科 坂本 拓哉(さかもと たくや)、舩場 真裕、今城 靖明、鈴木 秀典、西田 周泰、藤本 和弘、永尾 祐治、坂井 孝司 【目的】Kinematicミエログラフィー(CTM)から脊髄圧迫の動態変化を評価し、頚椎前屈で圧迫が増大する画像因子およびそのような特徴の症例の重症度を明らかにする。 【方法】頚椎症性脊髄症(CSM)と診断し、術前にKinematic CTMが撮影され、頚椎後方手術を行い、術中脊髄誘発電位にて障害高位を評価した79例を対象とした。Kinematic CTMで前屈・中間・後屈位での各椎間の脊髄横断面積(CSA)を測定した。後屈での圧迫増大をGroupEに前屈での圧迫増大をGroupFに分類した。2群間のJOAスコアを単変量解析で比較し、GroupFとなる因子について多変量解析を行った。 【結果】GroupEは52例(66%)、GroupFは27例(34%)であった。単変量解析ではC2-7前弯角は有意にgroupFで 10°程度前弯が失われ、JOA下肢スコアはGroupFで有意に低かった(GroupE:3.00,GroupF:2.00, P=0.015)。多変量解析では後屈位でC2-7角の小さな前弯と前屈時の大きな前方椎体すべり率が有意なGroupFに属す因子(P=0.031、P=0.082)で、オッズ比は0.685(95%CI:0.53~0.88)と1.42(95%CI:1.10~1.85)であった。 【考察】後屈位でのC2-7角の小さな前弯と前屈位前方すべりは有意な因子であり、GroupFではJOA下肢スコアが有意に低値であった。 | 
| 11.頚椎症性脊髄症における頸椎可動域低下と前方すべりは下肢機能悪化と関連する 山口大学 整形外科 舩場 真裕(ふなば まさひろ)、今城 靖明、鈴木 秀典、坂本 拓哉、坂井 孝司 【目的】CSMにおける脊髄症状と関連する因子を皮質脊髄路障害の程度と詳細な画像所見を比較し明らかにする。 【対象と方法】Kinematic CTミエログラフィーおよび中枢運動伝導時間(CMCT)を術前に計測できた86例を対象とした。年齢中央値は75歳。C6/7およびC7/T1障害症例は除外。経頭蓋筋誘発電位は小指外転筋(ADM)、下肢CMCT は母趾外転筋(AH)から記録し、ADM-CMCTとAH-CMCTを算出した。AH-CMCTからADM-CMCTを減じた胸椎部CMCTを算出し、胸椎部CMCT8.9ms未満をGroup1、8.9ms以上をGroup2とした。障害高位での脊髄横断面積(CSA)および前屈と後屈の面積差(dCSA)を測定した。C2-7前弯角、C2-7可動域、椎体すべり率、C7slope、C2-7SVA、JOAスコアを計測した。 【結果】Groupの内訳は1/2:61例/25例で、JOAスコア:9.78/8.24(P<0.01)、上肢 JOA スコア:2.91/2.32(N.S)、下肢 JOAスコア:2.94/2.22(P<0.01)であった。 多変量解析の結果、Group2に関連する因子は大きな 前方すべり率(P=0.006, OR: 2.53, 95%CI: 1.13–2.07)と小さなC2-7ROMであった(P=0.035, OR: 0.67, 95%CI: 0.52–0.88)。 【考察】前屈位で脊髄圧迫が代償されない、あるいは 存在することが下肢機能悪化と関連する有意な画像因子であり、CSMの管理および介入に有用な知見になる。 | 
| 12.腰椎除圧術後MOBに対する手術方法としてのOLIFの有用性について シムラ病院 整形外科 村田 英明(むらた ひであき) 腰部脊柱管狭窄症や変性辷り症に対して除圧術施行後、変性側弯、辷りの増大などで再手術が必要になった時、再手術方法の一つとして固定術がある。以前はPLIFが主な手術方法であったが、OLIFはより低侵襲な固定方法である。OLIFの利点は、癒着瘢痕化した術野を触ることなく、間接的除圧が期待されることである。OLIFは再手術時にも、その目的を果たしているのか、否か、再手術OLIFの術後成績を調査したので報告する。対象は14例。再手術時平均年齢は70歳(43歳~84歳)、男性5例、女性9例。前回までの手術回数は平均1.6回(1~7回)、前回最終手術からの期間は平均6年(術後5カ月~20年)。今回OLIF手術に至った原因(重複)は側方辷りや椎間板のwedgingを含めた変性側弯6例、後方辷り等(不安定性)の増大6例、ヘルニアの再発・取残し3例、DISH下端の除圧術後の再狭窄および不安定性の増大2例など。 【結論】腰椎除圧術後MOBに対するOLIFの術後成績は良好で、OLIF手術による間接的除圧の有用性が示された。 | 
| 13.Expandable cageを使用したmini-PLIFの短期成績 久留米大学医学部整形外科学教室 横須賀 公章(よこすか きみあき)、佐藤 公昭、山田 圭、吉田 龍弘、島﨑 孝裕、西田 功太、森戸 伸治、猿渡 力也、不動 拓真、志波 直人 【目的】腰椎辷り症に対するExpandable cageの有用性を文献的考察も交えて報告する。 【対象】2019/5から2020/3までに手術を施行した腰椎辷り症の患者30例、Expandable cageを使用した(D群)15例、bullet型cageを使用した(A 群)15例の画像学的検討を行った。術式は正中縦切開片側進入両側徐圧でのmini-PLIFを施行。骨移植はGraftonDBM(ヒト脱灰骨基質)を全例で併用した。 【結果】平均手術時間、平均出血量、平均在院日数に差は認められなかった。WBC,CRPには差がなかったが、7日目のHb値がA群が低かった。LLAとSLAに差はなかったが、wedge angleはA群7.33度から7.09度、D群7.21度から9.76度とD群がより改善していた。% of slipはA群23.1%から8.13%、D群25.2%から9.25%と2群間に差はなかった。また、術後感染やImplant failureはなかった。 【考察】Cage挿入がしやすく、かつ、椎体間に設置後、腰椎の生理的アライメントに合わせた高さ調整 Jackup(開大)が行えるExpandable cageは、MIS手技において有効なcageの1つと考える。また、矯正目的と言うよりも、速やかなcage設置およびフィッテイングがメインのcageであると考えると、使用しやすい。しかし、骨癒合や長期強度の観点においてはまだまだ経過を見ていく必要があると考える。 | 
| 14.腰椎前方後方同時固定術(L2-5)の術後に第5腰椎分離症・腰椎椎間板ヘルニアを発症した1例 佐賀記念病院 整形外科1) 佐賀大学整形外科2) 前田 和政(まえだ かずまさ)1)、森本 忠嗣2)、吉原 智仁2)、塚本 正紹2) 症例は54歳男性。主訴は立位歩行時や座位での腰殿部痛、左下肢痛しびれ。当院膠原内科にて結節性多発動脈炎の診断で、プレドニゾロン12.5mg内服中であった。200X年11月、第3腰椎変性すべり症に対して、腰椎前方後方同時固定術(L2-5)。術後腰痛は軽減した。200X+1年9月頃、腰痛再燃。X 線上 L1/2椎間板腔狭小化を認めた。腰椎MRI上 L1/2とL5/S1椎間板変性は進行し、左L5/S1椎間板ヘルニアを認めた。同月腰椎CT上両L5関節突起間部骨折を認めた。腰痛は自制内であったが、200X+2年1月から腰痛と左下肢痛増悪し、近医入院。L5/S1椎間板ヘルニアの診断で、ミロガバリン内服で痛みは軽減し退院。同年2月再診され、腰痛と下肢しびれ遺残しており手術を行った。同年3月、L5/S1PLIFを行い骨盤まで固定を延長した。腰痛は軽減、左下肢しびれは遺残している。固定術後隣接障害と考えているが、分離症の報告はない。ステロイドも影響を及ぼした可能性がある。 | 
| 15.腰椎高度すべり症にpedicular transvertebral screw fixationを施行した2症例 熊本大学附属病院 整形外科 藤本 徹(ふじもと とおる)、中村 孝幸、谷脇 琢也、杉本 一樹、宮本 健史 【目的】腰椎高度すべり症に対しpedicular transvertebral screw fixation(PTSF)を併用した後方除圧固定術(PLF)症例を報告する。 【症例1】78歳女性。70歳時に腰痛を自覚し徐々に両下腿痛を自覚された。立位単純 X 線側面像で%Slip74%のL5 分離すべりを認めpelvic tilt(PT)25°,pelvicinc idence(PI)60°,sacral slope(SS)37°,lumbar lordosis(LL)49°で、L4からS1のPTSFを用いたPLFを施行した。術直後X線像にて%Slip59%,PT22°,PI61°,SS43°,LL55°で、術後1年CTにてL5/S1椎体間の骨癒合を認め、JOAスコアは術前13点から24点と改善した。 【症例2】52歳女性。SLEにて29歳よりPSL5mg内服し50歳時に腰痛・両下腿痛を自覚された。立位単純 X 線側面像で%Slip86%のL5分離すべりを認めPT30°,PI57°,SS35°,LL43°で、MRIでL5/S1高位に脊柱管狭窄を認めた。PTSFを用いたL3からS2のPLFを施行し、術直後 X 線像にて%Slip71%,PT27°,PI59°,SS33°,LL42°で、術後1年CTにてL5/S1椎体間の骨癒合を認めた。JOAスコアは術前8点から28点と改善していた。 【考察】高度すべり症に対する矯正は合併症発生の可能性があり、特に骨脆弱患者の場合はインスツルメントによる矯正自体が困難となる。PTSFはアラメントの良い患者には適応があると考えている。 | 
| 16.Cleftを有する胸腰椎破裂骨折に対する椎体形成を併用した後方固定術 県立広島病院 整形外科 川口 修平(かわぐち しゅうへい)、西田 幸司、松下 亮介、中村 光宏、松尾 俊宏、望月 由 【目的】骨粗鬆症椎体骨折(以下OVF)では偽関節を生じ後弯変形を来すことが少なくない。我々はHAブロックによる椎体形成を併用した後方固定術を行ってきた。今回Cleftを有するOVF症例に対する同手術の成績について調査した。 【方法】2012年から2020年に当院で手術施行した10例(男3、女7)、平均年齢79歳(63-85歳)を対象とした。単純X線側面像で楔状変形率、後弯角を術前、術直後、最終観察時で評価した。 【結果】平均楔状変形率は術前28±5%で術直後81±8%、最終観察時79±9%であった。平均後弯角は術前35±9度、術直後12±8度、最終観察時15±9度であった。矯正損失は楔状変形率で1.4%、後弯角で3.5度であった。 【考察】OVFに対して強固な前方支柱再建が望ましいが、前方固定術は侵襲が大きい。Cleftを有するOVF症例で楔状変化率は28%から79%まで、後弯角は35度から15度まで矯正可能であった。OVFは前方固定術や骨切り術であっても後弯維持は困難との報告もある(柏井ら2013)。矯正損失は多少あるが、低侵襲性から高齢者に対する手術として有用であったと思われる。 | 
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