第93回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題Ⅱ)


6.陳旧性環軸椎回旋位固定に対しリモデリング療法を行ったが難渋した症例

独立行政法人労働者健康安全機構
熊本労災病院 整形外科
 
武藤 和彦(むとう かずひこ)、川添 泰弘、池田 天史
 
 症例は 5 歳女児。5 ヶ月前より誘引なく頚部痛が出現し、近医整形外科で頚椎捻挫として加療されていた。その後も症状改善なく発症 4 ヶ月で別の医療機関を受診。環軸椎回旋位固定の診断で入院の上Glisson 牽引されたが整復されず加療目的に当科紹介。初診時左回旋・右側屈であり CT では FieldingtypeⅡの陳旧性環軸椎回旋位固定と診断した。右環軸関節の変形があり、リモデリング療法を行う方針とした。全身麻酔下に整復しハローベスト装着。装着後 3 ヶ月で環軸関節のリモデリング傾向を確認しカラーに変更したが、1 ヶ月で再発した。Glisson牽引で治療し SOMI-brace に変更したが、整復位保持が出来ず再度ハローベストを装着。4 ヶ月再装着後にカラーへ変更。1 ヶ月でカラーを除去し、9 ヶ月経過したが再発なく可動域も正常範囲となり終診した。ハローベストによるリモデリング療法後再装着で治療した報告はなく、文献的考察も踏まえ報告する。
7.グリソン牽引を行った環軸椎回旋位固定の検討
 
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター整形外科
 
我謝 猛次(がじゃ たけつぐ)、伊波 優輝、杉浦 由佳、大島 洋平、金城 健
 
【はじめに】環軸椎回旋位固定に対して、外来通院で改善しない症例を中心にグリソン牽引を行っているが、開始時期や期間は確立されていない。入院時 CT の環軸関節変形の有無で 2 群に分けて後ろ向きに調査した。
【対象と方法】環軸関節変形の無かった 22 例を ND 群、変形を認めた 2 例を D 群とした。年齢、発症誘因、Fielding分類、牽引開始までの期間、牽引期間、再発の有無について検討した。
【結果】年齢:ND 群は平均 7 歳 6 ヶ月、D 群は 7 歳と 8歳。誘因:ND 群は不明 9 例、炎症性疾患 7 例、軽微な外傷 6 例、D 群では不明 1 例、炎症性疾患 1 例。Fielding 分類:ND 群は type1 が 19 例、type2 が 3例、D 群では type1 と type2 が各 1 例で、type3、4
はなかった。牽引開始までの期間:ND 群は平均 9.3日、D 群は 26.5 日と D 群が有意に長かった(P<0.03)。牽引期間と再発:ND 群は平均 6.8 日の牽引で、全例治癒し、再発なし。D 群の 2 例中 1 例は 30日間の牽引で治癒したが、他の1例では2度再発(8、22 日間の牽引)し、3 度目の入院、牽引 45 日間とカラー固定追加で治癒。
【考察】環軸関節変形予防には早期診断が重要で、環軸関節変形のリモデリングには 1 ヶ月以上の牽引が必要であった。
8.神経線維腫症1型に伴う症候性側弯症に対し、Growing rod を行った 1 例
 
宮崎大学 整形外科1
国立病院機構 宮崎東病院2
 
永井 琢哉(ながい たくや)1、濱中 秀昭1、黒木 修司1、比嘉 聖1、李 徳哲1、 黒木 智文1、黒木 浩史2、帖佐 悦男1
 
神経線維腫 1 型に伴う側弯症は治療に難渋する疾患である。今回 Growing rod で加療した症例を報告する。2008 年(7 歳)に学校検診で側弯症を指摘され、紹介受診。Cobb 角 66°(T5-T9)の側弯があり、神経線維腫症1型 dystrophic type と診断した。1 回 1 ヶ月/年、計4回の体幹ギプス並びに装具療法を行った。Cobb 角 90°と進行あり、2012 年(10 歳 8 ヶ月)にGrowing rod のアンカー設置(T2,3-L2,3)、 3 ヶ月後に rod 設置を行い、Cobb 角 60°となった。半年に1回、rod の延長を計 10 回施行した。その後 rod 折損をきたし、2017 年 3 月(15 歳 10 ヶ月)で最終固定を行った。2019 年 10 月に rod が折損したため、rodの入れ替え、追加骨移植を行い、現在経過観察中である。今後も定期的な骨癒合の評価など慎重な経過観察が必要である
9.Neurofibromatosis type1 に合併した dystrophic typeの側弯症に対して後方固定術後に前方固定術を追加した 1 例
 
香川大学整形外科1、神戸医療センター整形外科2、さぬき市民病院整形外科3
 
小松原 悟史(こまつばら さとし)1、宇野 耕吉 2、有馬 信男 3、山本 修士2、山本 哲司
 
【はじめに】Neurofibromatosis type1(以下 NF-1)は側弯症を合併することが良く知られている。特にdystrophic type の側弯症は変形の悪化や、偽関節の多さが報告されている。NF-1 に合併した症候性側弯症に後方固定術を行った後、前方固定術を行った 1例を経験したので報告する。
【症例】5 歳女児。生下時より café au lait 斑があり、NF-1 と診断されていた。側弯症指摘され、当科紹介となった。初診時Th8-11左凸44°のカーブがあり、外来で経過を観察されていた。10 歳時には Th1-7 右凸52°、Th8-11左凸65°に進行した。後方からTh4-L1 の固定術を行い、Th8-11 左凸 35°に改善した。12 歳時には頂椎周囲で dystrophic change が進行してきたため、腓骨移植を利用した Th6-12 前方固定術を行った。手術は右開胸とし凹側の荷重線上に腓骨を支柱として移植した。16 歳の現在 Th8-11 左凸38°で矯正は維持できている。また dural ectasia の進行はあるが、移植した腓骨も remodeling されてはいるものの骨癒合は充分得られ,荷重軸の支柱となっている。
【考察】NF-1 に合併した dystrophic type の側弯症では,前方後方合併による固定術を行わないと矯正を維持できないとする報告が多い。どの時点で前方固定を追加するかという点には議論があるが,本例では若齢でもあり、dystrophic change の進行を確認してから行った。
【結論】NF-1 に合併した dystrophic type の側弯症に対して後方固定術後に前方固定術を追加し,矯正も維持できた。
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