第88回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題2)


7.仰臥位で行う逆行性最小侵襲頚椎椎弓根スクリュー固定術(Reverse MICEPS)
 
高知医療センター 整形外科
 
枦元 佑大郞(はぜもと ゆうたろう)、時岡 孝光、林 隆弘
 
【目的】頚椎前方固定(AF)後に椎体腹側からガイドワイヤーを椎弓根経由で背側の皮膚を貫通させ、逆行性にcannulated pedicle screw(CPS)を挿入する逆行性最小侵襲頚椎椎弓根スクリュー固定術(Reverse MICEPS)を考案した。
【術式】カーボン製のMayfi eld頭蓋3点ピン固定で頭部を固定し、前頚部横切開で進入し、ケージを用いたAFを行った後、ナビゲーションを用いてプローブで椎体の腹側から椎弓根まで穿孔させ、ガイドワイヤーを進めて皮膚を貫通させる。
 手術ベッドを左向きに約40度回転させ、頚椎後外側に出た2本のガイドワイヤーの間を皮膚切開し、筋間を分けてretractorを設置する。ガイドワイヤーを通して後外側からドリル、タッピング後に中空CPSを逆行性に挿入し、ロッドで締結する。
【症例】77歳女性、シートベルトによる腸管損傷を伴ったC4脱臼骨折。腹臥位が禁忌であったため、仰臥位で整復、C4/5AF後にreverse MICEPSを行なった。79歳男性、C4亜脱臼でC4/5に椎間板ヘルニアの脱出があり、ヘルニア摘出と本法を行なった。
【結果】腹臥位が禁忌あるいは摘出すべきヘルニアがある時は仰臥位でAFが適応となる。前方にケージを挿入して椎間板高を復元し、逆行性CPSで圧縮力をかけるとLLIFと同様の前弯再建と間接除圧が得られる。
8.頸椎前方除圧固定手術におけるpitfalls
 
岩国市医療センター医師会病院
 
貴船 雅夫(きふね まさお)
 
 頸椎手術は圧倒的に後方からの手術が多く、合併症の頻度の高い前方手術は回避されることも多い。今回、頚椎前方除圧固定術で脊髄損傷を来たした症例を経験したので報告する。
  症例は79才男性 高度歩行障害で当科紹介 頚椎椎間板ヘルニア(C3/44/5)による脊髄症の診断でC4亜全摘手術を実施。術直後より左上下肢の麻痺は悪化した。術中の脊損や既往のある脳卒中の再発を疑いMRを実施したが異常はないと思われた。また椎体後方には椎体縁を残し移植骨が落ち込まないようにストッパーを作っていたので脊髄損傷のリスクは少ないと考えた。
 術後2日目で離床し、歩行訓練や上肢の運動リハを開始。その後麻痺は徐々に改善していった。経過中に再度MR実施しC4/5レベルでの脊髄損傷が判明した。CTではストッパーとして残していたC5の左上縁が骨折し小骨片が脊柱管内に落ち込んでいた。脊柱管内に移植骨が落ち込まなくても椎体後方の組織(骨など)が脊髄を圧迫する可能性があることを理解しておく必要があった。
9.頸椎症性神経根に対して神経根露出除圧の実際
 
白石共立病院 脳神経脊髄外科*1、伊万里有田共立病院 脳神経外科*2、長崎大学 脳神経外科*3
 
本田 英一郎*1(ほんだ えいいちろう)、田中 達也*2、桃崎 宣明*2、角田 圭司*3
 
 頚椎症性神経根に対して外科的治療はforaminotomyや前方除圧としてはkey holeによるtranscorpectomyの低侵襲法やanterior fusionの延長線上の神経根除圧がある。今回はanteriorfusionによる神経露出除圧について報告する。後縦靭帯は二重構造であり、深部群(厚い膜構造)と薄い白色の浅層の膜とで構成され、椎体静脈叢がこの間に存在する。稀に椎体中心部のこの部で静脈叢が残され静脈出血することがある。ほとんどは外側に静脈叢は存在する。前方アプローチで外側のルシカ関節近傍まで可及的に深部群を摘出すると薄い白膜が残り、その部は袋状になり、静脈還流が見られることがある。手術はその浅層膜上方で関節をCUSAやケリソンで削除すると神経根を全く傷つけることなく髄核などの椎間板成分が除去される。するとやや隆起した構造物が膜で覆われる。その時点で薄い膜のみを上方に持ち上げるように剥離切開する脊髄神経のsheetと腋窩の陥凹と脂肪と時に逸脱した髄核片を見ることがある。静脈性出血はある。時にかなり強い静脈出血をきたすこともあるが、容易に圧迫止血される。さらにその部で上下のpedicleをspatulaにて確認されれば除圧は完了する。この手順をビデオにて供覧する。
10.当科における頸椎ペディクルスクリューの術後成績と安全性の検討-O-arm、CTナビ、フリーハンドの刺入精度の比較検討-
 
宮崎大学 整形外科
 
濱中 秀昭(はまなか ひであき)、黒木 修司、比嘉 聖、川野 啓介、永井 琢哉、李 徳哲、帖佐 悦男
 
【はじめに】当科における頸椎PSの術後成績を検討し、O-arm、CT ナビ、フリーハンドの刺入精度の比較検討およびPSの安全性について報告する。
【対象と方法】2001年8月から当科で施行した頸椎PS152例を対象とした。検討項目として、手術時間、出血量、JOAスコア、PSの逸脱率(O-arm、CT ナビ、透視でのフリーハンドの比較、椎体別の比較)、合併症など検討を行った。
【結果】平均手術時間は4時間33分、平均出血量は461g、術前JOAスコア10.0点が術後13.0点と有意に改善していた。PSは全体で649本刺入されていた。全体のPS逸脱率は、649本中42本で6.5%であった。透視を使用したフリーハンドでの刺入は6.5%、CTナビ使用でのPS刺入は6.5%、O-armを使用したPS刺入は6.2%であった。Neoらの報告に準じて分類すると、神経血管損傷のリスクの高いgrade2以上の逸脱はフリーハンドで20本中11本(55%)、CTナビで13本中5本(38%)、O-armで9本中2本(22%)であった。合併症は、深部感染4例(2.6%)、術後血腫1例、instrumentの破損6例、隣接椎間障害2例に認めた。
【考察】O-armを使用したPS刺入の逸脱率は6.2%で、ほとんどNeo分類grade1の逸脱でありPS刺入において非常に安全性を高めるツールであると思われた。
11.Plateによる頸椎前方除圧固定術とZero-profi leはcageによる頸椎前方除圧固定術の治療成績の比較
 
大分整形外科病院
 
瀧井 穣(たきい ゆたか)、大田 秀樹、松本 佳之、井口 洋平、巽 政人、塩川 晃章、竹光 義治、木田 浩隆
 
【はじめに】Plateを用いた頸椎前方除圧固定術(ASF)では咽頭部違和感や嚥下困難を訴える患者も少なくない。それらの愁訴を解決するため、当院ではzero-profi le cervical cageを用いたASFを施行している。以前当院で報告したPlateを用いたASFの治療成績とzero-profi le cervical cageを用いたASFの治療成績を比較検討したので報告する。
【対象】2010年3月から2012年3月まで当院でPlateを用いたASFを施行した16例(P群)と2016年6月から2017年5月までzero-profi lecervical cageを用いたASFを施行した26例(C群)を対象とした。CTによる骨癒合率、合併症の有無について検討した。
【結果】骨癒合についてP群、C群ともに全例で骨癒合を認めた。合併症については、どちらの群でもmajor complication(硬膜損傷、感染、C5麻痺、食道損傷、術後血種など)は認めなかったが、P群でPlate screwのlooseningを2例、C群でcageの脱転を1例認めた。
【結語】P群、C群間でほぼ同等の骨癒合率であった。今後固定隣接椎間変化など長期の経過観察を行う予定である。
12.頚椎椎弓根スクリュー挿入における3Dモデルの有用性
  The effect of 3D model simulation before surgery on prevention of pedicle screw malposition incervical spine
 
鹿児島大学 整形外科*1、鹿児島大学 医療関節材料開発講座*2、鹿児島大学 保健学科*3
 
冨永 博之*1(とみなが ひろゆき)、棈松 昌彦*1、河村 一郎*1、石堂 康弘*2、山元 拓哉*1、米 和徳*3、小宮 節郎*1
 
【目的】頚椎椎弓根スクリューは脊椎不安定性や変形を伴う患者に対し強固な固定ができる有用なツールである。一方椎骨動脈や脊髄損傷などの危険性を伴う。現在まで3Dモデルを用いた術前シミュレーションの有用性を検討した報告は少ない。
【方法】対象は当科で頚椎椎弓根スクリューを使用した20症例。スクリューは透視側面像を用いてfreehandで挿入。重度変形や再手術、多椎間固定例など8症例(3D群))で3Dモデルを作成した。残り12症例(3Dなし群)との二群間比較を行い、頚椎椎弓根スクリューの逸脱を術後CTで評価した。
【結果】3D 群で中央値9本/例が、3Dなし群では中央値4本/例のスクリューが挿入され、スクリュー逸脱は3D 群で6本(9.8%)、3Dなし群で7本(12.9%)だった。二群間に有意差は見られず 変形が強い症例でも逸脱率は変わらなかった。
【考察】CT ナビゲーションは非常に有用なツールであるが導入費用が高くまたイメージの質が時折不適切な場合もある。3D群は変形が強い症例でもfreehand群と同様の逸脱率であり3Dプリンターを用いた術前シミュレーションは有用であると考えられた。
PAGE TOP