第87回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題4)


25.LLIFにおける尿管、分節動脈、腸管の位置評価 術中重要臓器損傷を予防するために

高知医療センター 整形外科

林 隆宏(はやし たかひろ)、時岡 孝光 

腰椎変性疾患にLateral Lumbar Interbody Fusion(LLIF)を71例施行した(OLIF44例 XLIF27例)。術中合併症予防のために、術前に造影CTとMRIで尿管、腸腰筋、分節動脈、腸管位置を評価し、術中内視鏡補助下にLLIF施行した。対象は2014年10月から2016年9月までにLLIF施行した72例 OLIF45例 XLIF27例、計90椎間であった。全例、内視鏡補助下にLLIF施行した。LLIFの進入経路上には尿管大血管、分節動脈、腸管が存在しており術中に注意が必要である。進入経路上にどのような構造物があるのか描出できる造影CTは術前に必須の検査と思われた。また、重要臓器損傷を予防するために確実に後腹膜腔へ到達することが重要であり、2incision approachが有用と思われた。重要臓器損傷予防のため、造影CT画像と術中所見を対比させながら手術を行った。術中重要臓器の損傷を認めなかった。
26.X core 2による椎体置換 ケージの伸長に着目して

高知医療センター 整形外科

林 隆宏(はやし たかひろ)、時岡 孝光

X-Core2 Systemで前方支柱再建を行った8症例を経験した。対象はTh11-L4までの骨折または偽関節で、平均年齢58歳、破裂骨折4例(L1,L2,L3,L4各1例)、偽関節4例(Th11 1例、L1 3例)であった。破裂骨折症例は初回に後方固定、2回目にX core挿入し、二期的に手術行った。検討項目は手術時間、出血量、周術期合併症、置換椎体高、腰椎前弯角であった。手術時間はX core挿入の開創から閉創までの平均時間は245分、後方固定まで含めた全手術時間の平均は338分、出血量の平均は560mlであった。周術期合併症は1例に術後の左大腿しびれ訴え、3例にケージの沈み込み、1例にケージの脱転を認めた。置換椎体高は平均4.2mm伸長していた。前弯は平均3度獲得されていた。骨粗鬆患者において良好な支持性を得ようとするとケージの沈み込みが見られた。しかし、ケージの伸長が不十分であると脱転することもあり注意が必要である。
27.当院におけるLIF(XLIF)に関連した術中・術後早期合併症

大分整形外科病院

巽 政人(たつみ まさと)、大田 秀樹、 松本 佳之、星野 秀士、中山 美数、 井口 洋平、瀧井 穣、木田 浩隆、竹光 義治

LIF(XLIF)は新しい側方アプローチとして、脊柱変形の矯正および間接的除圧に応用されている。当院では主に後弯矯正手術時の侵襲低減目的で行っており、2014年5月~2016年4月までに33例に施行した。LIFの関与が示唆される7例の術中・術後早期合併症を経験したので報告する。術中の合併症(4例):ALL損傷を2に認めた。後方固定後にcageは安定化し、脱転の進行はなく経過した。胸膜損傷を1例に認めた。肺実質損傷はなく症状なく経過した。対側への骨片・ヘルニアの脱出1例を認めた。後方固定時に椎間関節切除を行い症状は改善した。術後早期の合併症(3例):LIF後、間接的除圧の効果で症状軽快し、後方矯正追加後に症状増悪した例が1例あり、椎弓部分切除を追加し軽快した。LIF後の固定椎体の骨折が1例認め、テリパラチドを使用しcageの脱転なく骨癒合を得られた。腸腰筋血種による疼痛が1例認め、経過観察により改善した。 LIFは有意義な低侵襲椎手術であるが、様々なピットフォールを有するので注意を要する。
28.PPS固定の適応と治療成績

久留米大学 整形外科

岩橋 頌二(いわはし しょうじ)、佐藤 公昭、山田 圭、井上 英豪、横須賀 公章、後藤 雅史、松原 庸勝、永田 見生、志波 直人 

【背景】近年、脊椎手術における低侵襲手術の発達はめざましく、当院でも可能な限り取り入れている。
【対象と方法】対象は2014年4月1日から2016年3月31日までに当院においてPPS固定を施行した33名(男性23名、女性11名)、224本とした。これらに対して適応疾患、screwの刺入精度、合併症を後ろ向きに調査した。
【結果】適応は外傷19例、変性疾患5例、病的骨折4例、圧迫骨折3例、化膿性脊椎炎2例であった。刺入精度はZdichavsky分類で1a:200本、1b:9本、2a:0本、2b:9本、3a:0本、3c:6本であり、1aのみを正刺入と定義すると、正刺入率は89.3%であった。合併症は肋間動脈損傷が1例、創部離開が1例、インプラント脱転が1例、感染の再燃が1例であった。
【考察】一般的に正刺入率は85%~95%と言われており、当院の結果は諸家の報告と相違なかった。当院では外傷がメインでPPS固定が行われていたが、その他の疾患にも適応を拡大していた。しかし合併症を認めた4例は全て外傷以外の疾患であり、これらに対してはPPS固定の適応は慎重に判断しなければならないと思われた。
29.Wiltseアプローチによる腰椎椎弓根スクリュー設置における合併症の検討

明野中央病院 こつ・かんせつ・リウマチセンター

吉岩 豊三(よしいわ とよみ)、中村 英次郎、原 克利、藤川 陽祐 

【はじめに】当院での腰椎椎弓根スクリューの設置はWiltseアプローチを用い、スクリュー刺入部位はPPSと同様の位置とし、側面透視を使用している。今回我々は、椎弓根穿破の危険性と手術における出血量について検討したので報告する。
【対象と方法】2016年9月からの半年でTLIF(L4-5)を施行した16例を対象とした。平均年齢67歳、術後CTにてスクリュー穿破率、術後のhidden blood lossとHb値について調査した。
【結果】スクリューは、L4での穿破率が高く、外側10.9%であり、全てNeo分類のGrade1であった。Hidden blood lossは、平均418.4mlであり、total blood lossの58.7%に相当し、術後Hb値の減少量は平均2g/dlであった。
【考察】L4椎弓根での外側への穿破は、筋間からの刺入であり、筋肉よりも皮膚の干渉が原因として考えられた。術後Hb値が2g/dl以上低下する症例があり、hidden blood lossの存在を考慮する必要がある。
30.Cortical bone trajectory screwのclear zone 出現に関係する危険因子とその対策
 
徳島県立中央病院 整形外科 
 
小坂 浩史(こさか ひろふみ)、阿部 光伸、岩瀬 穣志、高橋 光彦、江川 洋史
 
【はじめに】腰椎変性辷り症にcortical bone trajectory(CBT)法で後方固定(facet fusion)を行っているが、screw周囲にclear zoneが出現すると固定性低下が危惧される。今回その危険因子を検討した。
【対象】2014年11月以降、CBT-FFを施行した19例24椎間(男性9例、女性10例、平均年令71.5才)を対象とした。
【方法】骨癒合率、clear zoneの有無、またclear zone出現の関連を年齢、性別、固定レベル、screw径及び長、皮質との接触数、cross linkにおいて統計学的検討した。
【結果】骨癒合率は20/24椎間(83.3%)であった。Clear zoneは14/78本(17.9%)で出現し、危険因子は年齢、皮質との接触数であった。
【考察】骨癒合率はPLIF90%前後PLF80%前後と報告されている。自験例は83.3%と良好な結果であった。CBT screwと従来のpedicle screwとの一番の違いは皮質と4点で接することである。今回clear zone出現の危険因子として、皮質との接触数があり、screw刺入の際に十分注意する必要があると思われた。その対策として術中イメージの工夫、術前3D模型でのデモを行っている。
【まとめ】CBT-FFの骨癒合率は83.3%であった。Clear zone出現の危険因子としては、年齢と皮質との接触数であった。
31.BKP術後に椎体動揺性を認めた3例
 
兵庫医科大学 整形外科
 
木島 和也(きしま かずや)、橘 俊哉、圓尾 圭史、有住 文博、楠山 一樹、吉矢 晋一
 
【はじめに】当科では椎体骨折遷延治癒の症例に対しBalloon Kyphoplasty(BKP)を行い良好な成績を得ている。一方、隣接椎骨折等の合併症を認め治療に難渋する症例も存在する。今回、BKP術後にセメントのfragmentation, migrationによる椎体動揺性を認めた3症例を経験したので報告する。
【症例】症例1、79歳女性。L3-5後方固定術後の患者。L1椎体骨折遷延治癒に対し受傷3か月でBKP施行。セメントは両側3㏄ずつ計6㏄注入。術後3か月でセメントのfragmentation, migrationを認めたが疼痛は自制内であったため硬性コルセット装着にて経過観察。現在、術後1年6か月にてmigrationも少なくなり疼痛なく生活されている。症例2、89歳女性。Th12椎体骨折遷延治癒に対しBKP施行。術後セメントのfragmentation, migrationを認めたが術後1年で疼痛もなく経過観察中である。症例3、92歳女性。BKP後、椎体動揺性を認めたがADL低下なく現在術後半年で軟性コルセット装着にて経過観察中である。
【考察とまとめ】過去にPMMAによる椎体形成において同様のfragmentationを認めた報告がある。BKPにおいてもセメントのfragmentation, migrationにより椎体動揺性を認める症例が存在し注意が必要がある。
32.早期にBalloon Kyphoplastyを行うことは問題なのか?
 
福岡青洲会病院 整形・脊椎センター
 
酒井 翼(さかい つばさ)
 
【目的】骨粗鬆症性椎体骨折で症状改善に乏しい症例に対して比較的早期にBalloon Kyphoplasty(以下BKP)を行い、その有効性と合併症について検討した。
【対象と方法】2015.4-2017.3までに骨粗鬆症性椎体新鮮骨折の診断でBKPを行った症例で追跡可能であったのべ81例を対象とした。入院後1週間はベッド上安静とし、半硬性コルセット装着にて起立歩行開始した。入院後2週でレントゲン評価、疼痛評価を行い、圧壊進行、NRS5以上、本人・家族の希望を考慮し、3週以内にBKPを施行した。ADL再獲得までの期間、内科的合併症、BKPの合併症を調査した。
【結果】ADL再獲得までの平均期間は30.1±6.0日であった。肺炎を4例、脳梗塞を1例に認めた。BKPの合併症はセメント漏出を14例(椎間板内10、側方4、前方ALL内2、後方PLL内2、脊柱管内2、重複あり)に認め、うち1例は下肢痺れを認めたが経過観察可能であった。新規骨折はのべ13例に認め、うち9例はBKPを施行した。いずれも経験数増加に伴い頻度は減少した。
【結語】比較的早期にBKPを行う事は術中合併症にさえ注意すれば健康寿命延長に寄与する優れた治療法である。
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