| *48.下肢麻痺を来した占拠率90%以上の胸椎OPLLに対して後方除圧固定を行った1例 高松赤十字病院 整形外科 大田 耕平(おおた こうへい)、三代 卓哉、富山 翔悟、杉峯 優人、殿谷 一朗、筒井 貴彦 【はじめに】今回我々は、占拠率90%以上の胸椎OPLLに対して後方除圧固定を行った1例を経験したので報告する。 【症例】75歳女性。両下肢全体の疼痛・しびれがあり、左足部の感覚の中等度低下、下肢MMTは腸腰筋4/3、四頭筋3/2、前脛骨筋3/2、下腿三頭筋3/3 と低下を認めた。CT、MRIでは嘴状のOPLLを認め、占拠率はT3/4で70%、T6/7で90%であった。T3-8の後方除圧固定を施行し下肢症状は改善したが、術後6日目に下肢麻痺(腸腰筋以下MMT1-2)の出現あり、創内確認のため再手術を施行した。少量の血腫除去及び骨化の追加切除を施行。術直後は下肢筋力の大きな改善は得られなかったが、リハビリを継続し徐々に改善傾向を認め、術後3ヶ月の時点ではMMT4程度、歩行器歩行可能となった。 【考察】本症例では全周性の硬膜骨化のため脊髄と骨化の境界が不明瞭、術中MEPも不安定であったため骨化の部分切除に留め、十分な除圧は得られなかった。占拠率が高い胸椎OPLLに対する術式は、諸家より様々な方法が考案されているが議論の残るところであり、未だ脊椎外科の大きな壁である。 |
| *49.胸椎後縦靭帯骨化症に対する後方除圧固定術における当院での工夫 大分大学医学部整形外科学講座 阿部 徹太郎(あべ てつたろう)、宮崎 正志、迫 晃教、加来 信広 【緒言】胸椎後縦靭帯骨化症では、骨化による脊髄前方からの圧迫が胸椎後弯により増長され重篤な脊髄麻痺をきたす。保存療法はほぼ無効で手術療法が選択されるが、術後に症状が悪化する症例もあり治療に難渋する。当院では後方除圧固定術にdekyphosis手技による脊髄の間接除圧を追加し、慎重な脊髄モニタリングを行う事で良好な成績が 得られており、文献的考察を加え報告する。 【症例①】39歳女性、1か月前から持続する両下肢筋力低下、歩行障害を主訴に当院へ紹介となる。第7-10胸椎に後縦靭帯骨化を認め、後方除圧固定術にdekyphosis手技を追加し、術後良好な成績が得られた。 【症例②】58歳女性、両下肢筋力低下、排尿障害を主訴に当院へ紹介となる。第1-10胸椎に黄色靭帯、後縦靭帯骨化所見を認め、後方除圧固定術にdekyphosis手技を加え、術後良好な成績を得られた。 【結論】胸椎後縦靭帯骨化症では、各種手術手技の危険性を理解し、適宜脊髄モニタリングを確認しながら、慎重に手術を進めていくことが重要である。 |
| *50.術後に麻痺増悪した頚椎後縦靭帯骨化症と脊髄係留を合併した1例 高松赤十字病院 整形外科 三代 卓哉(みしろ たくや)、大田 耕平、富山 翔悟、杉峯 優人、殿谷 一朗、筒井 貴彦 【症例】51女性。数年前より両手の使いにくさを自覚。3カ月ほど前より右上肢痛やしびれ出現し、徐々に歩行困難となり近医受診。頚椎後縦靭帯骨化症を認め、手術相談に当科紹介された。両上下肢肢筋力3-4レベル、握力8㎏、7㎏で巧緻運動障害あり、右中指は屈曲拘縮を呈していた。CTではC2-6レベルにOPLLに伴う頚髄の狭窄と輝度変化を認めた。術前JOAスコア7.5/17であった。C2-7後方固定、C3椎弓切除、C4-6椎弓形成を施行した。 手術開始時よりMEPの描出は弱かったが、C3椎弓切除途中でMEPの消失を認めた。除圧完了後、左のMEPは軽度改善したが、右は改善乏しかった。術後右上下肢の動きは乏しく、左上下肢は2-3レベルで左の膝立は可能であった。術前CTで腰椎レベルにSpina bifidaを認め、MRIでtight filum terminaleを認めた。術後1年で車いす移乗、自己トイレ移乗動作可能までJOA7/17であった。 Tight filum terminaleに伴う脊髄の伸長が頚椎手術操作に伴う麻痺増悪を助長してしまった可能性があった。術前CTでspina bifidaを確認した場合は、より慎重な手術適応が重要と思われた。 |
| *51.胸腰椎前方アプローチで術後乳び胸を生じた1例 香川県立中央病院 整形外科 生熊 久敬(いくま ひさのり)、廣瀬 友彦 【症例】77歳女性、数ヶ月前から近医にて第1腰椎圧迫骨折の保存治療を受けるも椎体圧潰が進行し当科紹介となった。初診時X線では、第1腰椎は高度に圧潰し後壁は脊柱管内へ突出、硬膜管を強く圧迫していた。ADL障害著しく手術を予定した。手術では前方アプローチによるL1椎体置換、L2/3LIF、T11-L3までの後方PPS固定を行なった。術後3週より動作時に呼吸苦が出現。胸部レントゲンおよびCTで左胸腔内に著明な液体貯留を認め胸腔ドレーンを留置。排液は黄白色、乳糜3+で乳び胸の診断となった。その後、絶食と胸腔内ピシバニール投与(胸膜癒着術)により なんとか軽快した。 【考察】L1椎体を掘削しT12-L1椎間板を掻爬している際に出所不明の透明な液体の貯留を生じた。その時は軽い髄液漏であろうと判断しそのまま椎体置換を終了した。今から思えばそれが乳びであったと考えられた。術中に胸管を視認するのは困難であり、事後対応が治療の主になるが、本症例は絶食、胸腔ドレーン留置、胸膜癒着術で軽快した。 |
| *52.術後ドレーンにより,硬膜損傷をきたした腰椎変性すべり症の1例 県立広島病院 整形外科 西田 幸司(にしだ こうじ)、五島 寛治、三谷 雄己、辰巳 隼人、中村 光宏、松下 亮介、松尾 俊宏 【目的】腰椎手術での硬膜損傷は手術操作時に多く、ドレーンによる硬膜損傷の報告は少ない。我々は術後陰圧ドレーンにより硬膜損傷をきたした腰椎変性すべり症症例を経験したので報告する。 【症例】85歳、女性。MRIにて第4腰椎すべりによる高度狭窄、CTでは黄色靭帯の石灰沈着を認めた。L4/5除圧術を施行したところ、黄色靭帯と硬膜は軽度癒着していたが硬膜の菲薄化は認めなかった。術後低圧ドレーン接続すると一時的に出血を認めたが、その後異常なかったため手術を終了した。 翌日、漿液性の廃液を認めたため髄液漏と診断した。再手術にて創部を展開すると、約1cm損傷した硬膜より噴出した馬尾を認めた。馬尾を完納後、硬膜を縫合しPGAシートとフィブリン糊でパッチ施行した。再手術後症状改善し、術後20日で転院となった。 【考察】術中には明らかな硬膜損傷は認めておらず、術後ドレーンの陰圧により硬膜損傷をきたしたと考えられた。今回のように高齢、高度狭窄症例では硬膜が変性しており、ドレーン圧により硬膜損傷をきたす可能性があることに留意すべきである。 |
| *53.MIS-TLIF後の重症終板損傷に対し再手術前にテリパラチド投与が有効であった一症例 独立行政法人労働者健康安全機構 九州労災病院 勤労者骨・関節疾患治療研究センター1) 整形外科2) 今村 寿宏(いまむら としひろ)1)2)、田中 宏毅2)、上森 知彦2)、吉本 昌人2) L4/5 MIST-TLIF 直後に終板損傷に伴ったcage subsidenceを認め、再手術前にテリパラチドを開始し、再手術後に仮骨が予想以上に進行した症例を報告する。 症例は75歳男性、L4/5腰部脊柱管狭窄症に対し内視鏡下椎弓形成術(MEL)を施行。術後3年で右L4/5椎間関節嚢腫による右下肢痛を認め、expandable cageを用いたL4/5 MIS-TLIFを実施した。術後1週目のCTでcageがL5終板に約4㎜沈下していることが確認されたが、軽度の腰痛のみであり本人の希望で経過観察となった。しかし、沈下が進行しL5椎体骨欠損が増悪、腰痛および下肢痛が出現した。再手術前にテリパラチドを開始し、術後4ヶ月目にsublaminar wiringとhookを併用したL3-S2再固定術を施行した。仮骨形成が進行し、転位は認められずcageは温存 された。術後1ヶ月で創部感染が生じたものの、L4/5の骨癒合は進行し、cageの転位もなかった。再手術後1年半経過し、S2の椎弓根スクリューに緩みが認められたが、患者は独居生活が可能であった。テリパラチドの使用が重症終板損傷においてcage温存に寄与したと考えられた。 |
| *54.脊柱後弯手術後に非閉塞性腸管虚血、腸管穿孔を生じた透析患者の1例 大分大学 整形外科 迫 教晃(さこ のりあき)、阿部 徹太郎、宮崎 正志 【はじめに】変形矯正手術は時折重篤な合併症を生じる。今回後弯矯正手術後に非閉塞性腸管虚血を生じた1例を経験した。 【症例】63歳男性。数年前に転倒した際に椎体骨折を指摘され、以後腰痛持続。脊柱後弯の手術目的に紹介。35年前に透析開始し34年前生体腎移植行い透析離脱も5年前透析再開。その他血胸に対する血腫時除去術、鼠径ヘルニアの手術歴あり。疲労性腰痛強く、T12,L1椎体の圧壊しT11-L1は55.7°の局所後弯を認めた。 【経過】T12-L1Xcore R、L2/3XLIFR、PPS で の 前 方後方手術を行った。手術時間5時間32分、出血1400ml。PO1dより透析再開されたが、血圧低くdry wightへは十分除水できず連日の透析となった。PO3d透析中に心窩部痛あり、嘔吐した。CTでイレウスの所見あったが、造影CTでは主血管の閉塞はなく、麻痺性イレウスの診断で胃管留置し保存加療となった。PO5dにCRP40.8と再上昇認めCT再検したところ、腹腔内free airを認めた。壊死型虚血性大腸炎による腸管穿孔の診断で同日緊急手術となった。 【結語】透析患者に対する高侵襲手術後、急な腹痛には腸管壊死を鑑別にあげる必要がある。 |
| 55.脊椎手術における術後排液量に影響を及ぼす因子の検討 徳島県立中央病院 整形外科 小坂 浩史(こさか ひろふみ)、岡田 諒、宮城 亮、近藤 研司、江川 洋史 【目的】脊椎手術では術後血腫による麻痺回避などを目的にドレーン留置することは通例であるが、術後排液量が想定よりも多いことをしばしば経験する。今回術後排液量が多くなると予想される因子を検討したので報告する。 【方法】2024年8月1日から2025年3月31日まで、当院で頚椎椎弓形成術を施行した34例おより腰椎椎弓切除術を施行した44例を対象とし、術後2日目(24時間~48時間)の排液量で、0-100ml/日群と100ml/日以上群にわけ、手術時間・術中出血量・既往歴の有無(循環器疾患、脳血管疾患、血液疾患、肝疾患、糖尿病)・抗血小板凝固薬の有無・術前Alb値・術後高血圧の有無・生活歴(年齢、BMI、飲酒歴、喫煙歴、ポリファーマシー)を検討項目とした。 【結果】頚椎椎弓形成術後では、手術時間と術後高血圧ありにおいて有意に術後2日目における排液量が多かった。腰椎椎弓切除術では術前Alb値が4.0g/dl 未満で有意に排液量が多い結果となった。 【結語】頚椎、腰椎手術で共通のリスクとなる因子はなかったが、手術時間、術後高血圧の有無、術前Alb 値に関しては予測因子になる可能性がある |
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