第100回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題⑧)【感染Ⅱ】


*42.脊椎カリエスに対してチタンメッシュケージを用いて脊椎固定術を行った2例

兵庫医科大学 整形外科

波多野 克(はたの まさる)、圓尾 圭史、有住 文博、木島 和也、山浦 鉄人、橘 俊哉

【はじめに】本邦の結核罹患率は減少傾向だが依然として注意が必要である。脊椎カリエスに対してチタンメッシュケージ(TMC)を用いた脊椎固定術を行った2例を経験したので報告する。
【症例1】70代男性。受傷後6ヶ月の胸椎骨粗鬆症性椎体骨折として経皮的椎体形成と後方固定を施行した。術後炎症反応が遷延,病歴の再聴取で若年時の結核性肋膜炎の既往が判明した。当該椎体の傍椎体膿瘍に生検を施行,結核菌が検出され脊椎カリエスと診断した。TMCを用いた椎体置換,後方固定延長を施行した。術後症状再燃なく経過している。【症例2】80代女性。Th6/7の傍椎体膿瘍と膿瘍による脊髄圧迫、下肢筋力低下で当院へ
搬送。術前検査のT-spotで結核菌感染が判明した。TMCを用いた後方椎体間固定、後方固定を施行した。術中検体から結核菌が検出された。術後症状再燃なく経過している。
【考察】脊椎カリエスに対してメッシュケージを用いた前方支柱再建は有用である。
*43.化膿性脊椎炎に対するケージを併用した脊椎固定術の有用性

兵庫医科大学 整形外科

山浦 鉄人(やまうら てつと)、圓尾 圭史、有住 文博、木島 和也、波多野 克、橘 俊哉

【目的】本研究では、化膿性脊椎炎に対してケージを用いた脊椎固定術の治療成績を検討した。
【方法】2015年7月から2023年4月までで当院で化膿性脊椎炎に対してケージを用いた脊椎固定術を施行した症例で1年以上フォローし得た18例を遡及的に検討した。患者背景、治療内容、画像的評価を検討した。
【結果】平均年齢は71歳、男性14例、女性4例で病変部位は頚椎3例、胸腰椎移行部が6例、腰椎が9例であった。術式はXLIF1例、X-core1例、TLIF6 例、前後方同時固定10例(チタンメッシュケージ)であった. 術後1年では全例病変部椎間は骨癒合を認めた。また局所後弯角は術前16.5±13.4°,術後1年5.7±10.6°で有意に後弯の改善を認めた(p<0.01)。
【結語】全例で感染の沈静化と良好な骨癒合が得られ、局所後弯角の改善も認めた。ケージを用いた強固な前方支柱再建で病巣部を安定化させることは不安定性の強い化膿性脊椎炎の手術加療として有用であると考える。
*44.局所持続抗菌薬灌流(CLAP)が奏効した難治性結核性脊椎炎の一例

福岡東医療センター 整形外科

松下 昌史(まつした あきのぶ)、柏木 彩乃

【現病歴】83歳女性、結核性脊椎炎と診断され、下肢筋力低下などの麻痺症状があったことから椎弓切除術および脊椎後方固定術を施行した。その後、抗結核薬の内服治療を行ったが、術後3ヶ月で皮下膿瘍を形成した。皮下膿瘍は複数回の手術を行っても改善せず、難治性であったため、局所持続抗菌薬灌流(Continuous Local Antibiotic
Perfusion; CLAP)を実施することとした。CLAPの実施により、皮下膿瘍の縮小および消失を認め、改善に至った。
【考察】本症例は、結核性脊椎炎に対する標準治療(脊椎固定術、抗結核薬内服)が奏効せず、皮下膿瘍を形成した難治性の症例であった。従来の治療では効果が不十分であったが、CLAPの導入により、持続的な灌流が可能となり、難治性皮下膿瘍の改善が得られ、病状の改善に至った。CLAPは術後創部感染例において有効性が報告されており、結
核性脊椎炎の膿瘍治療においても選択肢として有用であることが示唆された。
45.転移性脊椎腫瘍術後感染に対しContinuous local antibiotic perfusion(CLAP)を用いインプラントを温存しえた3例の検討

鹿児島市立病院 整形外科 

嶋田 博文(しまだ ひろふみ)、八尋 雄平、山元 拓哉

【目的】転移性脊椎腫瘍に対し手術を施行した癌患者において、手術部位感染(SSI)は最も重篤な合併症の一つである。今回我々は、脊椎固定術後SSI を合併した3例に対し、感染の制御を目的にCLAPを施行、インプラントを温存できたので報告する。
【対象・方法】対象は当科で転移性脊椎腫瘍に対する固定術後深部感染を発症した3例(平均年齢64歳)に対し、全例緊急で洗浄デブリドマン+CLAPを施行し、後ろ向きに調査した。がん腫は全例肺癌で、病的骨折罹患高位はT8・T2・T1であり、全例2above-2below固定術施行後であった。
【結果】術前画像上はスクリューのゆるみや化膿性脊椎炎は疑いにくかった。CLAP使用中に有害事象は認めず、使用期間は1~2週間であった。2症例においては、速やかに創状態・炎症反応改善し治療に復帰できた。1症例はCLAP開始後創状態・炎症反応改善したが、術後2週で原疾患の急性増悪により死亡した。
【考察】CLAPは難治性の骨軟部組織感染症に対し、脊椎領域でも有用性が報告されており、早期に感染を鎮静化させ、患者の治療継続・ADL改善に有用となりえると考えられた。
46.脊椎手術SSI後難治性創傷治癒症例に対するVAC療法

佐世保中央病院 整形外科

奥平 毅(おくだいら つよし)、山口 貴之、小西 宏昭

【背景・目的】脊椎手術の術後創感染(SSI)は早期の創洗浄、創培養、頻回な血液培養による起炎菌同定の努力、
適切で十分な量と期間の抗生剤を投与することで、ほとんどは創治癒を得ることができる。しかしながら手術対象患者の併存疾患の影響等Frailな患者において創治癒に難渋する。そのような症例に対してVAC療法を行ったので報告する。
【対象・方法】2022年10月から2024年4月までVAC療法を行った患者8例(男/女:5/3 平均年齢66.9歳、mFI:0.5(0.2-0.8) 頚胸椎移行部:1例 胸腰椎移行部:1例 腰椎:6例
【結果】7例(87.5%)で創治癒を平均27.4日で得た。透析患者3例のV A C使用期間は平均37.5日、非透析患者は平均22日であり、透析患者の1例は創治癒に至らず死亡し他の1例も創治癒には至ったものの肺水腫、心不全にて死亡した。
【考察】透析患者は皮膚が菲薄化し血流も乏しい。VAC療法を長期に施行しても創治癒を得ることが難しくCLAP等、他の治療法を検討する必要があると思われる。
47.脊椎インストゥルメンテーション感染治療における予後不良因子

鳥取大学 整形外科

小西 智明(こにし ともあき)、谷島 伸二、三原 徳満、武田 知加子、藤原 聖史、永島 英樹

【目的】脊椎インストゥルメンテーション感染の予後不良因子を検討すること。
【対象と方法】2004年~2023年の間、当院での術後感染例の内3か月以上フォローが可能であった22例(男性16例、女性6例、平均年齢70.7歳)を対象とした。インプラントを温存できた例を治癒群、できなかった例を不良群として後方視的に評価した。検討項目は性別、年齢、BMI、基礎疾患、手術時・感染時の血液検査項目、起炎菌、発症から手術までの期間、感染に対する手術回数、高気圧酸素療法の併用、バンコマイシン散布の有無とした。
【結果】治癒群は12例、不良群は10例であった。不良群ではBMIが有意に低く(p=0.02)、感染時の白血球数が有意に高く(P=0.047)、耐性菌の割合が有意に多かった(p=0.04)。ロジスティック解析の結果はBMI低値が予後不良の関連因子であった(オッズ比:14.6;95% CI:1.1187.3,P=0.04)。
【結語】感染後のインプラント温存のため高気圧酸素療法やバンコマイシン散布などを試みているが、BMI低値の症例の予後は不良であり、今後の対策さらなる対策が必要と考える。
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