| *10.治療に難渋した透析患者の腰椎変性すべり症 岩国市医療センター医師会病院 池田 真圭(いけだ まさよし)、貴船 雅夫 【症例】患者は62歳、女性。X年3月に左下垂足が出現し、当院初診、左TA・EHLの筋力低下あり。(MMT2)精査でL3前方辷り、L3/4椎間板消失、椎体終板の不整、L3/4レベル硬膜の圧排あり。診断は腰椎変性すべり症(L3)、治療としてL3/4 PLIF実施。術後に左TA・EHLの筋力改善傾向。術後5ヶ月目、中腰になった際に腰痛出現、その後左膝以下の倦怠感、左臀部・左大腿前外側痛が出現、体動困難で当院受診、両側TA・EHLのMMT0、精査で両側L4椎弓骨折、L4/5椎間板腔の狭小化、L4/5椎間板ヘルニアあり。初回手術6ヶ月後に再手術(L5 pedicle screw追加、前回固定部と連結、L4/5開窓、ヘルニア摘出)、術後疼痛は消失するも筋力改善なし。その後の経過でimplant 下端でのトラブル、L5椎弓骨折を疑う所見あり。 【考察及び結論】今回は除圧固定を行い、固定下端側での骨折、隣接椎間障害、implant failureを経験した。透析患者の腰椎変性すべり症に対して固定を行った後の経過には普段以上に注意を要する。 |
| 11.除圧術後再狭窄に対しTLIFを行った5症例の検討 成尾整形外科病院 藤本 徹(ふじもと とおる)、成尾 政一郎、田畑 聖吾、牛牧 誉博 【はじめに】除圧術後再狭窄症例に対しTLIFが有効であった5症例を報告する。 【対象と方法】2023年4月より再狭窄に対し演者がTLIF施行した男性3例女性2例で平均年齢69歳。L3/4高位とL5/S高位2例、L5/6高位1例である。手術は下肢痛の強い側の瘢痕剥離後に椎間関節を切除しケージと局所骨を椎間板腔に挿入後PPS挿入しロッドに締結する。手術時間、出血量、術前・調査時のJOA Score及びその改善率とVAS値(下肢痛)を評価した。 【結果】観察期間は平均9ヶ月、手術時間は平均214分、術中出血量は平均137mlであった。平均JOA Scoreは術前10.6点から調査時22.4点と改善し、改善率は平均64.1%であった。平均VAS値は術前7点から調査時1.2点で、術後下肢痛・麻痺発生が1例あったが1か月で改善し、調査時鎮痛薬を希望する症例は無かった。 【結語】短期ではあるが術後改善率は良く、日常生活も保たれていた.本法は椎間板腔の持ち上げと制動効果により症状改善したと判断する。今後は手術時間の短縮を図り長期成績も調査したい。 |
| 12.手術加療を要した腰椎椎間関節嚢腫の検討 JA 吉田総合病院整形外科 山本 りさこ(やまもと りさこ)、定地 茂雄、本山 満、安岐 智史、中山 耕平 腰椎椎間関節嚢腫は椎間関節の変性や滑膜の増殖によって生じる嚢腫性病変であり、椎弓切除術後に生じやすいことも報告されている。当科で椎間関節嚢腫により手術を要した症例について検討を行った。 症例は7例でいずれも男性であり、平均年齢は72歳(67~78歳)であった。椎弓切除術後の発症が2例であり、5例は手術既往のない症例であった。発症高位はL3/4が1例、L4/5が3例、L5/S が3例であった。全例で強い下肢痛があり、筋力低下を6例で認めた。手術時は全例で嚢腫が硬膜と癒着しており、顕微鏡視下に切除を行い硬膜損傷は生じなかった。手術既往のない1例で嚢腫切除後に再発し再手術を要した。 手術以外の治療方法として椎間関節内へのステロイド注射や神経根ブロックも行われているが、筋力低下をきたしている症例では早期の手術が必要と考えられる。手術の際には硬膜損傷などのリスクに注意する必要があり、再発を防ぐため椎間関節内側縁の切除を行う必要がある。 |
| *13.術前診断に苦慮した腰椎黄色靭帯血腫の1例 鳥取大学 整形外科 藤原 聖(ふじわら さとし)、谷島 伸二、三原 徳満、武田 知加子、池田 大樹、永島 英樹 【症例】59歳女性、誘因なく腰痛と左下肢痛を自覚し近医を受診、腰椎MRIで腫瘤性病変を認め当院紹介となった。基礎疾患は高血圧のみで、神経学的には特記すべき所見は認めなかった。MRIでは、L1/2 高位で硬膜外正中の巨大な腫瘤が高度に硬膜嚢を圧排し、T2low、T1iso~high、造影MRIでは辺縁と内部が不均一に造影されていた。CTでは一部scalloping を認めた。症状出現後3か月で手術(L1棘突起縦割式椎弓切除下に腫瘤摘出)を行った。硬膜外に硬く肥厚した黄色靭帯が一部硬膜と癒着しており、慎重に剥離するも摘出後はおよそ10×12mm大程度の硬膜欠損となった。髄液漏は認めず、人工硬膜での修復は困難と判断しネオベールとボルヒールでの補強のみ行い手術を終了した。術後速やかに症状は改善し、病理学的検査の結果は黄色靭帯血腫であった。 【考察】本症例では、硬膜外腫瘍も念頭に手術を行った。比較的稀な黄色靭帯血腫であるが、造影効果を伴 うものも報告されており、また血腫は経時変化により多彩なMRI像を呈するため、黄色靱帯と連続性を認める腫瘤は本疾患を鑑別に早期の手術が望ましい。 |
| 14.腰痛を伴う脊髄係留症候群の手術効果 鹿児島大学 整形外科 小倉 拓馬(おぐら たくま)、冨永 博之、河村 一郎、俵積田 裕紀、黒島 知樹、上園 忍、谷口 昇 【はじめに】原因不明である非特異的腰痛の中には診断困難な症例もあり脊髄係留症候群もその一つとして挙げられる。そのため腰痛を伴った脊髄係留症候群の手術効果を検討した報告は少ない。本研究は腰痛を伴った脊髄係留症候群患者に対する手術効果を検討したものである。 【対象】当院で腰痛を伴った脊髄係留症候群と診断された11例で、主に疼痛の指標であるVisual Analog Scale(VAS)、finger floor distance(FFD)、下肢機能、膀脱直腸障害を評価し術前後の改善度を評価した。 【結果】年齢中央値は33.5歳で女性が9例であった。3例で脊髄脂肪腫を伴っていた。術前の腰痛VAS中央値は70(60-80)mmから術後に中央値20(5-40)mmまで改善した。すべての患者で腰痛の改善が見られ、膀胱直腸障害があった6例中4例(66.6%)で機能改善を認めた。 【考察】脊髄係留症候群は小児期に治療される例もいる一方で成人期に指摘される脊髄係留の解除が困難な場合でも疼痛改善効果が見られ手術が有効であると考える。このことから非特異的な腰痛の原因の一つとして、脊髄係留症候群の可能性を考慮すべきである。 |
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