第83回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題Ⅰ)【外傷】


1.L5横突起骨折と骨盤骨折の関係

佐賀大学 整形外科1)、唐津赤十字病院 整形外科2)、嬉野医療センター 整形外科3)
 
森本 忠嗣(もりもと ただつぐ)1)、塚本 正紹1)、吉原 智仁1)、生田 光2)、小河 賢司3)
 
【背景】L5横突起骨折と不安定型骨盤骨折との関連性が指摘されているが、詳細な報告例は少ない。
【目的】L5横突起骨折を伴う骨盤骨折の特徴について調査すること。
【対象と方法】過去5年間に佐賀県3次救急病院(3施設)で骨盤骨折と診断された146例(男性82例、女性64例、平均年齢61歳)を対象とした。受傷機転、骨盤骨折の部位・分類、全身合併損傷、L5横突起骨折の有無、治療内容、死亡率について調査した。
【結果】L5横突起骨折の合併例は39例(27%)、そのうち仙骨骨折合併が32例(82%)であり、不安定型骨盤骨折を16例(41%)に認めた。L5横突起骨折あり群はL5横突起骨折なし群と比較して、不安定型骨折の頻度が有意に高く、輸血も手術の頻度が有意に高かった。
【考察】L5横突起骨折は高率に仙椎骨折を合併しており、解剖学的な両者の密接な関連が示唆された。横突起骨折は椎体や椎弓の骨折に比べ軽傷と思われがちであるが、L5横突起骨折は不安定型骨盤骨折と関連があり十分な注意が必要である。
2.当院における不安定型骨盤輪骨折に対する後方固定術の治療経験
 
長崎大学 整形外科 
 
安達 信二(あだち しんじ)、田上 敦士、津田 圭一、新見 龍士、宮本 俊之、松林 昌平、福島 達也、田口 憲士、水光 正裕、尾﨑 誠
 
【はじめに】不安定型骨盤輪骨折には脊椎インスツルメントを用いた後方固定が行われることがある。強固な内固定や皮膚トラブルを生じにくい固定法が良好な成績につながると考えられることから我々はS2-alar-iliac screw(S2AI)やLow profile S1-iliactrajectory(LSIT)を用いた後方固定術を行っている。
【対象】2013年4月から当院外傷センターに搬送され手術を行った9例を調査した。男性2例、女性7例、平均年齢47歳(21~87歳)であった。AO分類Type Cで転落外傷4例、交通事故5例で多発外傷を伴っていた。
【結果】合併症としてscrewの骨盤内への逸脱を1例、皮下感染を2例認めた。前方要素に固定を追加する検討が必要だが固定性は良好であった。今後もさらに症例を重ね手技の統一や低侵襲化に努めていく方針である。
3.不安定型骨盤輪骨折に対する、安全な経皮的Iliosacral screw固定 ―術前CT画像によるscrew刺入点の決定と術中3D-X線透視の併用―
 
九州大学大学院 医学研究院臨床医学部門 整形外科学分野1)、九州病院 救命救急センター2)

久保田 健介(くぼた けんすけ)1)2)、籾井 健太1)2)、播广谷 勝三1)、竹内 直英1)、林田 光正1)、岡田 誠司1)、松本 嘉寛1)、岩本 幸英1)
 
【背景】Iliosacral screw(IS screw)は、不安定型骨盤輪骨折に対し、後方プレートに匹敵する固定力を有することが報告されている。しかし、screw挿入可能範囲の狭さや骨盤の形態の個人差から、単純X線透視下であっても合併症なくIS screwを挿入することは容易ではない。そこで我々は、術前CT画像によりscrew刺入点を決定し、3D-X線透視を使用することで安全にscrew挿入ができるか検討した。
【方法】2013年4月から2014年12月までの間に、当院で不安定型骨盤輪骨折に対し、3D-X線透視下に経皮的IS screw固定を行った9例を対象とした。術中ならびに術後合併症、ならびに、術後CTによるscrewの皮質骨穿破の有無を確認した。
【結果】全例で骨盤の皮質骨を穿破することなく、ISscrewを挿入することが可能であった。また、神経血管損傷をはじめとした術中・術後合併症は見られなかった。
【結語】術前CT画像によるIS screw刺入点の決定と術中3D-X線透視の併用を行うことで、不安定型骨盤輪骨折に対し合併症なく、経皮的IS screw固定を行うことができた。
4.馬尾損傷を伴った仙椎横骨折の治療経験
 
総合せき損センター 整形外科
 
河野 修(かわの おさむ)、植田 尊善、前田 健、森 英治、弓削 至、芝 啓一郎
 
仙椎横骨折は高所転落などの高エネルギー外傷にて生じる稀な骨折である。骨折部の転位や骨片にて馬尾損傷を生じることが多く、他部位の脊椎骨折や多発外傷の合併、重度の膀胱直腸障害の割に下肢麻痺が軽度であるため、診断が遅れることも少なくない。また治療法に関しても意見の一致をみていない。当センターで手術治療した仙椎横骨折は3例であった。
【症例1】17歳、男性。鉄柱と地面に挟まれ前屈強制にて受傷。仙髄領域の触覚のみ遺残。同日、後方除圧固定術施行。術後3年で、完全に自排尿可となった。
【症例2】17歳、男性。バイク事故。全身状態が悪く、受傷後2ヶ月で転院。仙髄領域の運動感覚不全麻痺がみられた。後方除圧と骨片打ち込みを行い、自排尿および性機能も完全に回復した。
【症例3】33歳、男性。飛び降りにて受傷。第2腰椎破裂骨折と両足部の骨折を合併。L2以下の不全麻痺で仙髄領域は完全麻痺。L5-腸骨後方固定施行。改良Frankel D1へ改善し自尿も回復するも残尿が多く自己導尿併用。3例の自験例を振り返り、文献的考察を加えて報告する。
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