第101回西日本脊椎研究会  抄録 一般演題Ⅱ【腰椎Ⅱ(PS、内視鏡)】


10.当院におけるセメント注入型椎弓根スクリューの使用経験
 
徳島健生病院
 
峯田 和明(みねた かずあき)、鎌田 光洋、岡田 正彦
 
【目的】当院におけるセメント注入型椎弓根スクリューの治療成績について調査し報告することである。
【対象・方法】対象はセメント注入型椎弓根スクリューを用いて脊椎後方固定術を施行した29例(男性9例, 女性20例)である。術前診断は圧迫骨折後遷延癒合が26例、DISHに合併した骨折が2例、化膿性椎間板炎が1例であった。骨折椎体に経皮的椎体形成術(24例)あるいはcorpectomy(2例)を行い、基本的には1above(a)-1below(b)の固定としたが、隣接椎体の椎弓根径が4mm未満の症例や胸腰椎移行部で骨折椎体の頭側椎体が頂堆の場合は1 level固定を追加した。全例に再頭尾側の各スクリューにcement-augmentationを行った。
【結果】NRS、椎体楔状角、局所後弯角は術前 9.4±0.88点、5.5±7.5度、5.6±13.2度で、術後 1.9±3.2点、3.1±10.5度、5.9±13.6度で除痛効果に優れていた。スクリューの弛み、pull-outを1例に認め抜釘を要した。1本あたりのセメント注入量は1.07±0.30ccであった。セメント漏出は20例(69.0%)に認め、椎体外静脈叢への漏出であった。
【考察】Liuらは0.5ccのcement-augmentationはnon cement-augmented screwと引き抜き強度が変わらなかったと報告している。セメント不足には注意が必要である。
11.CAPSにおける術中CLと術前後胸部CTによるPCEの評価
 
三好病院 整形外科1)
兵庫医科大学 整形外科学教室2)
 
大石 隼人1)2)、圓尾 圭史2)、有住 文博2)、木島 和也2)、橘 俊哉2)
 
【目的】近年、セメント注入型椎弓根スクリュー(CAPS)使用が増えているがcement leakage(CL)は頻度が高く、肺セメント塞栓症(pulmonary cement embolism 以下PCE)は稀だが重大な合併症である。 CAPSにおける術前後に胸部CTを用いたPCE頻度とCLの関連について調査した。
【方法】対象は2022~2024年に脊椎手術でCAPSを使用した患者31例(平均年齢:80.5歳, 男性14例, 女性17例)、CAPS133本である。術前1週間以内と術後2週間以内に5mm sliceの胸部CTでPCE有無を評価しCLはYeom分類で評価した。また術中もしくは術後CTで椎体前壁を超え、CLを認めたものをmajor CLとした。これらをCL有無でセメント量、CAPS高位、左右で比較検討した。
【結果】PCEは無症候性1例(3.2%)、CLは19.8%に認めType Sが88.5%と最多であり、major CLは3.1%(4/133本)であった。またmajor CLは3例(9.7%)で内1例(33.3%)がPCEであった。CL有無でセメント量、CAPS高位、左右で有意差は認めなかった。
【考察】過去の報告でCAPS後のPCEは6%前後で、本研究では3.2%であり同等であった。CAPS後のPCE対策としてmajor CLを予防することが重要であり、セメント注入方法や術中CLの確認方法を検討する必要がある。
12.遊動型ディスポーザブル赤外線カメラを用いた脊椎ナビゲーションの椎弓根スクリュー刺入精度
 
洛和会丸太町病院 脊椎センター1)
参宮橋脊椎外科病院 整形外科2)
京都中部総合医療センター 整形外科3)
松下記念病院 整形外科4)
 
(まき)(お) 1)2)(まきお さとし)、原田 智久1)2)、清水 佑一3)、高取 良太4)
 
【はじめに】椎弓根スクリュー(PS)の逸脱は、神経・血管・臓器損傷など重篤な合併症を起こすリスクがある。ナビゲーションが使用され、安全なPS刺入が可能になったが、PS逸脱を完全に防ぐことができない。2022年から遊動型ディスポーザブル赤外線カメラを用いた脊椎ナビゲーションであるNEXTAR®︎が使用可能になった。NEXTAR®︎を用いて固定術を行い、術後CT像でPS刺入精度を検討したので報告する。
【対象および方法】NEXTAR®︎で脊椎固定術を施行した32例を対象とした。 PSは184本で、術後CT像で、Rampersaudのgrading systemを用いた逸脱程度(Grade1:逸脱なし、Grade2:<2mm、Grade3:2-4mm、Grade4:>4mm)および逸脱方向、合併症について検討した。
【結果】逸脱の程度は、Grade1:182本(98.9%)、Grade2:2本(1.1%)、Grade3およびGrade4は認めなかった。逸脱方向は外側2本で、合併症は認めなかった。
【考察】NEXTAR®︎は、カメラとターゲットの距離が近く、位置情報のやり取りが直線的で一方向であるため、反応速度・精度・操作性は高い。逸脱率は1.1%と低く、NEXTAR®︎を用いることで安全にPSを刺入することが可能であったと考えた。
13.従来法未経験術者による脊椎内視鏡下椎弓切除術の学習曲線に関する検討
 
島根大学 整形外科
 
永野(ながの) 聖(ながの さとる)、真子 卓也、杉原 太郎、内尾 祐司 
 
【目的】従来法の経験がない術者による内視鏡下椎弓切除術の学習曲線を検討する。
【方法】脊椎手術従来法の経験がない整形外科医が施行した60例(脊椎内視鏡下手術技術認定医の指導下25例、自身で執刀35例)を対象とし、1椎間あたりの手術時間、出血量、合併症を評価し、回帰分析、Mann-WhitneyのU検定を用いて解析した。
【結果】全体の1椎間当たりの手術時間は147.3±36.5分、出血量は15.0±18.2mlであった。手術時間は短縮傾向を示した(傾き-1.08、p=0.00059)。出血量も有意な差は生じなかったが減少傾向(傾き-0.20、P=0.157)であった。合併症は再手術が必要な術後硬膜外血腫1例(20例目)、修復が必要であった硬膜損傷1例(33例目)であった。
【考察】脊椎内視鏡だけでなく、脊椎手術そのものの習熟過程も含まれていたことが、緩やかな学習曲線として反映された可能性がある。
【結論】従来法未経験医師による内視鏡下椎弓切除術においても明確な学習曲線が認められた。内視鏡操作のみならず、解剖や病巣の理解、ハイスピードドリルの取り扱いや止血操作など脊椎手術技術全般の習熟を織り交ぜた場合でも、安全に内視鏡手術を習得することは可能と考えられる。
14.UBEを用いた片側進入両側除圧術(ULBD)の検討
 
福岡脊椎クリニック
 
津田 圭一(つだ けいいち)、隈元 真志
 
【はじめに】Unilateral Biportal Endoscopy(以下UBE)は潅流下に手術を行うため視野がクリアであり、また操作性が高いという利点があり、腰部脊柱管狭窄症に対する除圧術に適応されている。UBE-Unilateral Laminectomy for Bilateral Decompression(以下ULBD)について検討した。
【対象と方法】2024年2月から2025年3月までにUBE-ULBDを行った28例(男性20例、女性8例)。平均年齢71.5歳、高位はL2/3:4例、L3/4:12例、L4/5:17例。検討項目は手術時間、NRS(腰痛、下肢痛)、周術期合併症、椎間関節温存率とした。
【結果】手術時間は平均138分、周術期合併症は硬膜損傷2例、硬膜外血腫1例、下関節突起骨折3例。椎間関節温存率は進入側74.7%、反対側70.4%。
【考察】UBEのラーニングカーブはやはり厳しく、特に内視鏡手術、関節鏡手術の経験に乏しいと30度斜視鏡に慣れるまでに経験を要す。術後の腰痛、下肢痛の改善は得られており、入院期間の短縮には期待できる。周術期合併症は他脊椎内視鏡と同様に生じうり、注意が必要である。椎間関節の温存はむしろ進入側の方が良好で、径が細いスコープの利点が反映されているものと考える。
15.全内視鏡脊椎手術(FESS)の現況と今後の方向性
 
地域医療機構(JCHO)九州病院 整形外科
 
土屋 邦喜(つちや くによし)、大森 裕己
 
FESSの現況:当院では導入以来約600例のFESS手術を行ってきた。FESSは出血、術後疼痛が極めて少ないため生体リスクの減少、患者の満足度向上が期待できる。
現在まで遭遇した問題点:導入以来数例に血腫除去術や硬膜損傷を経験したが、これらは手技の工夫で明らかに減少した。多発狭窄に対する除圧の適応限界は今後の課題である。椎間孔病変に対する手術は適応に十分注意を払えば成績は比較的安定している。
今後の課題:導入コストやランニングコスト、手術機器の耐久性、操作性改良等が課題である。ラーニングカーブの克服のためトレーニング機器やセミナー等の充実に加え、AFESS、UBEとの共存、使い分けも今後の課題と思われる。
結論:軟部組織の侵襲が少ない全内視鏡手術(monoportal FESS)はApproach Related Disorder,ARDを最小化する現時点で最良の選択肢といえる。潜在的な問題点を克服した適切な手術手技や器具の改良でさらに効率、安全性を含めたトータルな小侵襲を目指す必要がある。
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