| *37.椎体の高度破壊が進行した上位胸椎化膿性脊椎炎の一例 県立宮崎病院 整形外科 上妻 隆太郎(こうづま りゅうたろう)、菊池 直士 Th4、5化膿性脊椎炎の経過中に椎体の高度破壊が進行した一例を経験したので報告する。 症例は58歳男性で10日前から左の背部痛があり次第に下肢の脱力としびれが進行し歩行困難となったが様子をみており麻痺の出現後1週間が経過して当院へ救急搬送となった。 既往に重度のアトピー性皮膚炎がある。来院時にTh4領域以下の感覚鈍麻、 下肢筋力は腸腰筋以下完全麻痺で高度の膀胱直腸障害を認めた。CTでTh4、5椎体の破壊とMRIで硬膜外膿瘍による脊髄圧迫所見を認め、搬送当日に硬膜外膿瘍のドレナージを目的に椎弓切除術を施行した。起炎菌はMSSAで術後は抗菌薬投与を継続し感染が鎮静化するまで臥位安静で管理を行った。抗菌薬投与6週で炎症反応は陰性化したが下肢の完全麻痺・膀胱直腸障害の改善はなかった。 経過中にTh4、5椎体の破壊が高度に進行し後弯変形が進んだため初回手術の8週後に後方固定術を施行し離床を開始した。椎弓切除時の後方固定併用の是非について文献を踏まえながら考察する。 |
| *38.治療に難渋した化膿性脊椎炎 岩国市医療センター医師会病院 貴船 雅夫(きふね まさお)、清水 元晴、池田 真圭 70歳男性 【主訴】腰痛による起立困難、下肢脱力 【既往歴】DM(インスリン治療中)コントロール不良 肝機能障害 一人暮らし 飲酒・喫煙 気ままな生活 【現病歴】X年8月右腰臀部下肢痛出現し、9月当科紹介 歩行時脱力あり 発熱なし CRP0.32 WBC6450 Neut70.4% MRではL4/5での狭窄と同部の感染疑い。 OPは希望されず、通院数カ月で患者が治療自己中断。 X+1年9月 低血糖で入院となった医療機関より腰臀部痛による体動困難あり当院紹介、入院。 初診から1年のMRではL4/5椎間板や終板の破壊と同部に液体貯留あり、今回も感染が疑われた。2回の椎間板生検ではWBCはあるものの菌同定には至らず。 ミエロCTではL4/5レベルでの終板の破壊と脊柱管の狭窄があり、同部の前方には3.7cm×4.2cm の腹部大動脈瘤が判明した。当院の麻酔科からはこのレベルの動脈瘤の場合、大学病院では手術不可になるとの判断であった。 血管外科のある近隣の三次病院へ紹介したところ、脊椎の感染の治療終了後に引き受けるとの返事であった。 そのため、患者と近親者に手術のリスクに対して了承を得たうえで、当院麻酔科の協力のもと2回に分けて手術を実施した。 |
| *39.後側方固定術で寛解した腰仙椎化膿性脊椎炎の1例 熊本大学病院 整形外科 前田 和也(まえだ かずや)、宮本 健史、中村 孝幸、谷脇 琢也、杉本 一樹、柴田 悠人 【はじめに】椎体破壊、骨欠損の大きいL5/S1の化膿性脊椎炎に対して後側方固定術を併用し寛解した症例を経験したので報告する。 【症例】80代女性。数ヶ月前から腰痛があり近医を受診された。保存的加療で経過観察されたが、 増悪傾向にあり当院紹介となった。CTにてL5/S1を中心に高度な椎体融解を認め、MRIにて L5/S1の椎間板膿瘍を認めた。生検にて菌を同定後に抗菌薬を開始し、L4-腸骨までのスクリューによる固定と後側方の骨移植を行った。術後より腰痛改善し、徐々に炎症反応も陰性化した。術後1年の時点で後方の骨癒合も確認でき、インプラントによる合併症も認めていない。 【考察】本症例は骨破壊の強い化膿性脊椎炎患者であったが、後方固定に加え自家骨移植を行うことで後方の骨癒合が得られ、スクリューが緩むことなく感染の制御につながったと考えられた。 |
| 40.感染性脊椎炎と対峙する1956 年-2020年までの感染性脊椎炎の動向 鳥取大学 整形外科 谷島 伸二(たにしま しんじ)、三原 徳満、武田 知加子、池田 大樹、小西 智明、永島 英樹 【背景】感染性脊椎炎は、以前はまれな疾患であったが、年々増加傾向にありその背景も変化していると思われる。 【目的】本研究の目的は、過去66年間における感染性脊椎炎の動向を調査することである。 【対象と方法】1955年から2020年までの感染性脊椎炎310例を対象とし、年代ごとに分類した。患者の年齢、性別、起炎菌について年代別に比較を行った。 【結果】全体で腰椎の感染が最も多かった。罹患年齢は、50群では34.4歳であったが、年代ごとに上昇し、00群(68.8歳)および10群(72.5歳)は有意に他群より高かった(P<0.01)。性別では50群、60群で女性が過半数を占めていたが、00群、10群では有意に減少していた(P=0.04)。起炎菌は50群から70群では結核菌が主だったが、80群以降では一般細菌が主となり、00群ではMRSAなどの耐性菌が27.7%を占めたが、10群では8%に減少した。一方で、00群と10群では常在菌による感染が増加し、00群で8.5%、10 群では31.1%に達した。 【結語】感染性脊椎炎の背景は年代ごとに変化しており、近年は高齢化と易感染性宿主の増加に伴い、常在菌による感染が増えている。 |
| 41.結核性脊椎炎の診断における有用な入院時血液検査、画像検査の項目の検討 福岡東医療センター 整形外科 柏木 彩乃(かしわぎ あやの)、松下 昌史 【対象と方法】感染性脊椎炎が疑われた患者38例を対象とした。入院時の年齢、性別、血液検査においてWBC、CRP、IGRA 検査(T-SPOT、QFT)、胸部CTでの肺結核陰影の有無を両群間で比較検討した。 【結果】診断は結核性脊椎炎17例、細菌性脊椎炎21例であった。年齢、性別に両群間に有意差はなかった。入院時血液検査ではWBCは結核性脊椎炎で優位に低く、CRPは結核性脊椎炎で優位に低かった。IGRA 検査では結核性脊椎炎が13例陽性(76%)、細菌性脊椎炎は1例陽性(4.8%)であり、結核性脊椎炎が高率に陽性であった。胸部CTでの肺結核陰影の陽性率は結核性12例(70.5%)、細菌性0例(0%)であり、結核性脊椎炎で高率に陽性であった。 【結語】結核性脊椎炎は血液検査ではWBC、CRPが低く、IGRA検査で高率に陽性となり、胸部CTで肺結核性陰影を高率に認める。結核性脊椎炎の診断に有用な情報である。 |
.png)