| *30.XR技術を活用した多診療科合同による神経線維腫症I型患者の胸腔内髄膜瘤治療 佐賀大学 整形外科 平田 寛人(ひらた ひろひと)、横田 栞、吉原 智仁、塚本 正紹、戸田 雄、小林 孝巨、森本 忠嗣 【背景】神経線維腫症I型(NF1)はカフェ・オ・レ斑や神経線維腫などの皮膚病変を伴い、時にDuralDysplasiaにより髄膜瘤を発症することがある。今回、経時的に拡大した胸腔内髄膜瘤の症例に対し、複数診療科による合同カンファレンスを実施し、低侵襲手術を行えたため報告する。 【症例提示】症例は36歳女性で、幼少期にNF1と診断されていた。健康診断の際、左下肺野に腫瘤影が発見され、その後当院に紹介され、MRIにて11×14×17cmの胸腔内髄膜瘤が確認された。これに対し、脳神経外科、呼吸器外科、整形外科が合同でカンファレンスを行い、脊椎後方アプローチや胸腔アプローチを用いた低侵襲手術を計画し、成功裏に実施した。 【考察】NF1患者の約69%で胸腔内髄膜瘤が発症し、その多くで骨構造の変化も見られるため、多診療科による連携治療が必要とされる。本症例では、XR技術の活用により手術計画が円滑に進み、各診療科の強みを活かした低侵襲手術が可能となった。 |
| *31.胸腔鏡補助下に辺縁切除しえた椎体浸潤を伴う肋骨軟骨肉腫の1例 島根大学医学部 整形外科 永野 聖(ながの さとる)、真子 卓也、杉原 太郎、大畑 康明 41歳男性。健康診断で右肋骨の異常陰影を指摘された。他院呼吸器外科を受診しCTガイド下生検を施行され右第10肋骨軟骨肉腫の診断を受け当科を受診した。 神経脱落所見はなかった。CTでは右第10肋骨頭に骨破壊と、胸腔内へ突出し椎体に接する腫瘍性病変が存在した。MRIではT9,10椎体左側にT1 low、T2 highの腫瘤を認め、一部椎体内信号変化を認めた。 手術は側臥位で開始し呼吸器外科により胸腔鏡下に右第9-11肋間動静脈を結紮・切離し、胸腔内から右第9-11肋骨切離した。続いて腹臥位で、第8-11胸椎左側にPSを刺入、 ロッド締結を行い、右第8、11胸椎にPSを刺入した後、T9-11右片側椎弓切除を行い硬膜外縁まで露出させ、右第9、10神経根を同定し結紮して切離した。 胸腔鏡観察下に椎弓根から椎体に向け骨切りを行い、腫瘍を第9.10胸椎椎体右側と第9-11肋骨を一塊として摘出し手術を終了した。術後神経脱落所見なく、術後2週で自宅退院した。病理学的組織検査では軟骨肉腫(Grade2)の結果を得た。 術後4か月で1か所の肺転移が出現し切除術を行われ、その後局所再発や転位巣出現なく経過している。 |
| *32.治療に難渋した若年発症原発性脊椎悪性腫瘍の2例 山口大学医学部附属病院 整形外科 市原 佑介(いちはら ゆうすけ)、鈴木 秀典、船場 真裕、西田 周泰、藤本 和弘、池田 裕暁、田中 一成 【症例1】11歳女児、両下肢麻痺、歩行障害発症。両下肢MMT1~3、T12椎体~椎弓に骨融解を伴う病的骨折あり。MRIで脊柱管高度狭窄を認め、原発性骨腫瘍を疑い手術施行。迅速病理でGiantcell rich osteosarcomaと診断され、一期的な切除は困難と判断し後方固定と可及的な除圧を行った。化学療法後、腫瘍脊椎骨全摘術(TES)施行した。術後2週間で独歩退院し外来で経過観察中。 【症例2】19歳男性、急性の両下肢麻痺、体動困難発症。両下肢MMT0~2、膀胱直腸障害あり。骨性病変なく、MRIでC7-T2に椎間孔~胸郭まで浸潤し著明な脊柱管狭窄を伴う硬膜外腫瘍あり。緊急で椎弓切除行い迅速病理でsmall round cell tumorと診断、可及的除圧で終了。後日Ewing Sarcomaと確定診断。下肢麻痺は改善し、実家のある岡山大学へと転院し化学療法を行った。 【考察】比較的稀な脊椎原発悪性腫瘍(3-5%)を経験し、共に麻痺を発症していたため緊急での生検+除圧を行い、化学療法後、二期的な治療方針で進めた。最も効果的な外科的介入は、広範なen-block切除とされている。脊椎原発悪性腫瘍の生存率は低く、集学的治療および長期的な経過観察が望まれる。 |
| *33.診断に難渋したメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)の胸腰椎硬膜内病変の一例 独立行政法人労働者健康安全機構 熊本労災病院 整形外科 髙木 寛(たかき ひろし)、武藤 和彦、浅沼 涼平、磧本 宏信、二山 勝也、川添 泰弘、土田 徹、宮崎 眞一、池田 天史 【背景】メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)はMTX内服中に認められるリンパ増殖性疾患の総称である。多彩な病型を示し、時に診断に難渋する。今回我々は、硬膜内にMTX-LPDが発生した稀有な症例を経験したため報告する。 【症例】77歳女性。排尿障害を認め、MRIにてTh12高位に髄内腫瘍が疑われ近医より当科紹介となった。半年前のMRIでは同部位に病変は認められず、当初硬膜外腫瘍の疑いで手術を行った。術中所見では硬膜内で馬尾神経に絡む腫瘍性病変であった。境界不明瞭で全摘出は困難と判断し生検に留め、硬膜形成のみを行い手術終了した。病理では悪性所見は認めず、麻痺は経時的に改善傾向であったが、術後3週で右顔面神経麻痺が出現し、頭部単純MRIで右小脳から橋にかけて異常信号を認めた。術後4週で小腸穿孔を生じ緊急手術 を行なった。追加した病理検査にてMTX-LPDの診断となり、化学放射線療法目的に高次医療機関へ転院となった。MTX中止と放射線療法で麻痺は改善傾向にある。 【結語】MTX-LPDに伴う脊髄病変は報告が少なく非常に稀である。文献的考察を踏まえ報告する。 |
| 34.当院で経験した脊椎発症小児Langerhans cell histiocytosisの3例 宮崎大学 整形外科 永井 琢哉(ながい たくや)、濱中 秀昭、黒木 修司、比嘉 聖、高橋 巧、松本 尊行、亀井 直輔、帖佐 悦男 Langerhans cell histiocytosis(以下LCH)は稀な疾患で、小児の脊椎に発生することもあり、診断や治療選択に難渋することもある。当院で経験した脊椎発症LCHの3例を報告する。 【症例1】12歳、男児。誘因のない背部痛を主訴に前医受診。Th9圧迫骨折を認め、紹介受診。局所麻酔下に生検を行い、LCHと診断。麻痺はなく、単一病変であり経過観察、2年で増悪なしであった。 【症例2】15歳、男児。頚部外傷後に頚部痛持続し、4ヶ月後発熱を契機に精査。環軸椎の破壊を伴う後頚部腫瘤を認めた。CTガイド下生検でLCHと診断。PETで多発骨病変あり、化学療法施行。初診後5年で環軸椎変形を認めるが、寛解中である。 【症例3】8ヶ月、男児。寝返りができなくなり小児科受診。四肢麻痺が疑われ精査。C6/7-Th2/3レベルの硬膜外腫瘤を認めた。同部位のCTガイド下生検ではわからず、頭蓋内欠損部の生検でLCHと診断。皮膚病変もあった。化学療法行い、治療後7ヶ月、麻痺も改善傾向にある。 |
| 35.脊椎発生の骨巨細胞腫(GCT)に集学的治療を行った4例の経験 宮崎大学 整形外科 比嘉 聖(ひが きよし)、濱中 秀昭、黒木 修司、永井 琢哉、高橋 巧、松本 尊行、亀井 直輔 【はじめに】脊椎発生の骨巨細胞腫(GCT)は治療後の機能温存が重要であり、患者のQOLに直結する。外科的切除術、搔爬術の他に動脈塞栓や放射線治療に行われてきたが2014年からはデノスマブが保険適応となり治療の選択肢も増えている。当院で経験した脊椎発生GCTに対し集学的治療を行った4例を報告する。 3例は術前に動脈塞栓術を施行し腫瘍をen blockに切除し脊椎再建を行った。2例は術後1年で再発を認め腫瘍搔爬を行った。そのうち1例は再発したためデノスマブを使用し治療継続中である。残りの1例は13歳と若年でサイズが大きく切除不能と判断し術前にデノスマブを8カ月使用した。腫瘍が縮小した時点で腫瘍切除を行った。 【考察】脊椎発生GCTはen blockに切除することが理想的である。しかし、切除不能例も多く塞栓術+搔爬術を施行するも再発したとの報告も多い。近年切除不能例や再発例へのデノスマブ使用の良好な成績が報告されており、今後は術前後の使用や副作用軽減の工夫、薬剤中止のタイミングなどを検討していく必要がある。 |
| 36.ダンベル型神経鞘腫術後の腫瘍再増大リスク因子の検証 九州大学 整形外科 樽角 清志(たるかど きよし)、衛藤 凱、横田 和也、小早川 和、幸 博和、川口 謙一、中島 康晴 【はじめに】本研究の目的はダンベル型神経鞘腫の臨床データを評価して術後再増大のリスク因子を探索することである。 【対象と方法】対象は2013年1月から2023年3月までに当院で手術を行い、ダンベル型神経鞘腫の診断でかつ術後にMRI評価を2回以上行った20例とした。評価項目は術前MRI画像、術後の腫瘍増大径(mm)、術後の腫瘍平均成長率(mm/年)などを評価した。2mm以上の腫瘍径増大を認めた群と増大を認めなかった群の2群に分けて各調査項目を検証した。 【結果】増大群は12例、非増大群は8例であった。術前MRIがT2強調像にて均一に高信号の症例(T2high 群)は有意に術後増大しなかった。また、T2high 群とそれ以外の症例で腫瘍の平均成長率を比較したところそれぞれ0.08±0.08mm/年、3.13±1.00mm/年であり、T2high群以外の症例で有意に成長率が高かった。 【結語】ダンベル型神経鞘腫は術前MRI画像の違いによって、リスクを考慮した手術計画、術後フォローが必要である。 |
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