第100回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題⑤)【側弯・脊柱変形】


*25.小児軟骨無形性症に伴う胸腰椎後弯変形に対して矯正固定を行った2例

総合せき損センター 整形外科

久保田 健介(くぼた けんすけ)、前田 健、坂井 宏旭、入江 桃、甲斐 一広、畑 和宏、益田 宗彰、河野 修

【はじめに】軟骨無形成症は、四肢短縮型の低身長をきたす骨系統疾患であり、時に脊柱変形および脊柱管狭窄症を呈する。進行性の後弯変形に対し後方矯正固定術を行った小児軟骨無形性症2例について報告する。
【症例1】12歳女児。T12-L3:93°の後弯変形、L1/2に狭窄を認め、L2 PSOを含めたT12-L4後方矯正固定術を施行。術中、後弯矯正後より両側TA以下のMEP波形が低下。脊髄造影後に狭窄部の追加除圧を行った。術後、神経学的脱落なく、T12-L3 後弯角は14°と改善を認めたが、術後3年ほどまでPJKが進行した。装具を継続し、その後は大きな矯正損失はなく経過している。
【症例2】13歳男児。T12-L2:95°の後弯、L1/2に狭窄を認め、L1 VCRを含めたT11-L3後方矯正固定術を施行。術中、MEP波形の変化なく、術後神経学的脱落なし。T12-L2後弯角を41°と緩やかな矯正を行ったところ、術後半年はPJKなく推移している。
【考察】小児軟骨無形成症に伴う胸腰椎後弯変形では、脊柱管狭窄を合併していることから矯正操作時に麻痺の出現リスクが高い。術中の神経モニタリングや緊急時の脊髄造影検査などの備えが重要と考えられた。
26.Parkinson 病を伴う成人脊柱変形に対する矯正固定術の4例

産業医科大学病院 整形外科1)
産業医科大学病院 脊椎脊髄センター2)
長崎労災病院3)

豊島 嵩正(とよしま たかまさ)1)、中村 英一郎2)、瀬尾 智史3)、邑本 哲平1)
山田 晋司1)、吉田 周平1)、佐保 明1)、酒井 昭典1)

 Parkinson病(PD)を伴う成人脊柱変形(ASD)における矯正固定術は合併症も多く固定範囲に関して議論がある。PDを伴うASDに対し矯正固定術4例の治療成績及び合併症を報告する。症例は、平均年齢74.5±4.7歳の女性、PD (Yahr分類2-3)に罹患しており、不随運動と姿勢障害、バランス不良、頑固な腰痛、GERDを認めた。術前アライメントはC7-CSVL 51.8±37.5mm、C7-SVA 209.6±56.0mm、LL-11.2±15.9 °、PI 48.8±3.5°であり、獨協フォーミュラでの理想LLは40.3±2.1°であった。手術は2期的に行い、前方XLIFはL3/4/5の2椎間が2例、L2/3/4/5 の 3椎間が2例であった。後方固定はUIV が Th6~10(Th6, Th7, Th8, Th10で1例ずつ)でLIVは全例骨盤SAI固定であった。術後1 年のアライメントはC7-CSVL 15.5±9.2mm、C7-SVA 0 ± 23.8mm、LL 45.5±1.7°であり、LL達成率は119±8%であった。全例で術早期の合併症はなく、術後経過が追えた3例(1例は転居)全てにPJKを認めたが、2例は無症候性で良好な経過である。UIVがT7の1例に6年後に上位胸椎の後弯進行による首下がりを認めている。PDの無いASD例と比較し考察する。
*27.思春期特発性側弯症に対する脊椎後方固定術におけるナビゲーションを使用した椎弓根スクリューの挿入精度の検討

岡山大学 整形外科

篠原 健介(しのはら けんすけ)、魚谷 弘二、小田 孔明、尾﨑 敏文

 本研究の目的は思春期特発性側弯症(AIS)に対する脊椎後方固定術(PSF)においてナビゲーションを使用し挿入した椎弓根スクリュー(PS)の精度を検討することである。
 2012/12月-2024/8月、当科にてPSFを施行されたAIS患者111例を対象とした。全例ナビゲーションを使用しPSを挿入した。患者情報、手術項目を収集し、術後CTによりPSの設置位置をRampersaud分類(Grade:A-D)により分類した。対象群における全固定椎体は1179椎体、使用されたPSは合計1750本であった。判定はGrade A:1606本、Grade B:103本、 Grade C:36本、Grade D:6本であった。
 4mm以上の大きな逸脱であるGrade Dは0.3%の発生頻度であったが脊柱管内への逸脱はなかった。全例で再手術は要しなかった。ナビゲーションを用いても頻度は低いが大きな逸脱は避けられなかった。システムへの習熟やRobotic surgeryなどの新技術への応用も精度向上には重要である。
28.高度脊柱側弯症の治療経験

鹿児島市立病院 整形外科1)
鹿児島大学 整形外科2)

山元 拓哉(やまもと たくや)1)、冨永 博之2)、河村 一郎2)、嶋田 博文1)、八尋 雄平1)、谷口 昇2)

【はじめに】高度脊柱側弯症は、rigidな脊柱変形や高度の胸郭変形に伴う呼吸機能低下等問題点が多い。今回Cobb角100度以上の側弯を有する症例の合併症や短期成績について調査した。
【対象と方法】2005年から2018年に手術した連続する10(男性4、女性6)例について検討した。手術時年齢は平均19(11-58)歳で、6例が神経筋原性4例が特発性であり、7例は早期発症側弯症であった。2例に後方単独手術、8例に二期的前後合併手術を施行した。これらの症例のCobb角の変化、骨癒合、周術期合併症、追加手術について検討した。
【結果】平均Cobb角は、術前124.6(100-146)度が術直後50.3(32-73)度、術後2年53.4(32-74)度であり、矯正率は術直後60.3(47-71)%、術後2年57.7(51-71)%であった。術後2年のCTでは椎体間および後方の骨癒合不全を各1例に認めたが、screwの緩みやImplant failure の出現はなかった。術中大量出血2例、MEPの電位低下(術後片側下肢筋力低下)・矯正時血圧低下・肝損傷・SSI・椎体骨折・肺炎を各1例に認めた。早期の追加手術を5例、気管切開を1例に要し、distal adding-onに対する手術も1例で必要となった。
【考察】高度側弯症では高頻度の合併症および追加手術の可能性が高い。診断および治療介入の遅延を回避するため、メディカルスタッフや患者サイドへの啓蒙は重要と考える。高度の変形に至った症例においては、治療の困難性をよく理解していただき、原疾患を考慮した無理のない手術プランのもとに行うべきと考える
29.脳性麻痺による神経筋原性側弯症の術中・術後合併症

鹿児島大学 整形外科1)
鹿児島市立病院 整形外科2)

河村 一郎(かわむら いちろう)1)、冨永 博之1)、俵積田 裕紀1)、小倉 拓馬1)、黒島 知樹1)、上園 忍1)、山元 拓哉2)、谷口 昇1)

【はじめに】脳性麻痺(CP)による側弯症における手術療法は、手技の複雑さや高率な合併症が報告される一方で、患者や介護者の高い満足度が報告されている。本症例における術中・後合併症について後ろ向きに検討した。
【対象および方法】2008年以降当科で手術を施行したCP側弯:13例を対象とし、患者因子及び画像評価と術中・後合併症の関連を検討した。
【結果】術中合併症:7例(出血>2000g:4例、MEP消失:3例)、術後合併症:8例(感染:3例、下肢麻痺:1例、気管切開:1例、食思不振:1例、イレウス:1例、インプラント関連:1例)を認めた。術中合併症とBMIが(合併症無:17.6±2、合併症有:14.9±2.0 p=0.045)、術後合併症は術前Cobb角と関連した(合併症無:67.0±20.5°、合併症有:92.1±28.6 p=0.048)。術前HbやGeriatric Nutritional Risk Indexとは関連しなかった。
【考察およびまとめ】術中合併症と低BMIが関連したが、貧血や栄養状態とは関連しなかった。出血については、体重と関連する循環血液量及び凝固因子との検討も必要である。術後合併症に関しては、高度変形に至る前の手術選択により減少できる可能性がある。
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