第89回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題6)


25.腰椎再手術に対するPercutaneous Endoscopic Discectomy transforaminal approach(PED TF 法)の適応と有用性の検討
 
北九州市立医療センター 整形外科
 
吉兼 浩一(よしかね こういち)、泉 貞有、菊池 克彦
 
【はじめに】われわれは椎間板ヘルニアに対し局麻下transforaminalにヘルニアを切除するPED TF 法を行っており、再発ヘルニアにも同様に適用してきた。
【目的】再手術におけるPEDの有用性を内視鏡的に明らかにすることである。
【方法】2009年9月から2018年2月に当院で施行したPED1308例のうち再発ヘルニアに対するPED TF 法は39例(L2/3: 2, L3/4: 9, L4/5: 28)。その治療成績、MRI、術中ビデオ所見(推間板ヘルニアと硬膜外腔の状態)を評価した。前回手術はヘルニア後方切除術20例(Love 10、MED 7、PED inter laminar 3)、側方切除術10例(PED TF 9、Laser 1)、脊柱管狭窄症の後方除圧術9例(椎弓切除 6、MEL 3)であった。
【結果】全例でinside―outに椎間板からヘルニア脱孔に到達しヘルニアを摘出、神経除圧を確認し術後症状の改善を得た。周術期合併症は認めなかった。
【結語】一般に腰椎再手術では硬膜外腔の癒着瘢痕の処置に難渋し硬膜神経根損傷のリスクが高まるが、PED TF 法は前回手術に関係なく硬膜外腔の癒着瘢痕を避けてヘルニアに到達することが出来るため、神経損傷リスクを抑えることのできる安全な術式として有用である。
26.顕微鏡視野内表示システムを併用した術中脊髄モニタリングの工夫 ―リアルタイムモニタリングを目指して―
 
広島市立安佐市民病院 整形外科・顕微鏡脊椎脊髄センター
 
藤原 靖(ふじわら やすし)、 泉 文一郎、大田 亮、古高 慎二、橋口 直史、角西 寛、真鍋 英喜
 
 我々は術中脊髄モニタリング波形の際に術者が直接波形を見て評価することを重視している。従来は術野から見える位置にモニタリング波形を表示するモニタを設置して手術してきたが、一旦術野から目を離す必要があることには変わりなかつた。
 今回我々は新しく導入した顕微鏡の視野内表示システムを利用して、術中顕微鏡視野の片隅にモニタリング映像を表示するように工夫したので報告する。
使用した顕微鏡はライカM5300H6で、視野内表示システム DI C500を併用し、左目の左上隅にモニタリングの実波形を表示しながら手術を行っている。本システムでは実際の顕微鏡視野を妨げない形で映像を表示できるため、モニタリング波形をリアルタイムで見ながら手術することが可能である。
 経頭蓋刺激筋誘発電位は手術操作を止めて刺激するため波形のリアルタイム表示はあまり必要ないが、術中持続筋電図の監視や、術中神経根を刺激して筋誘発電位を確認するためには本システムは非常に有用である。
 本発表では手技の実際とその有用性について発表する。
27.MOBにおけるLLIFの有用性
 
長崎労災病院 整形外科
 
山口 貴之(やまぐち たかゆき)、奥平 毅、馬場 秀夫、小西 宏昭
 
【はじめに】脊椎手術において、Lateral Lumbar lnterbody Fusion(以下LLIF)の有用性が報告されている。今回、除圧術後の固定術におけるLLIFのindirect decompressionの有用性を検討した。
【対象および方法】2014年12月から2017年12月までに当科で行ったLLIF232例のうち①除圧術の既往②当該高位の複数回手術にLLIFを使用③LLIF時に後方除圧を行っていない④LLIF高位が除圧術後椎間に限定されている、22例を抽出した。固定術後の隣接椎間障害に対するLLIFは除外した。このうち、術前と術後3か月時の JOABPEQが算出可能だった15名を対象とし、術前後の JOABPEQ、NRS(腰痛、下肢痛)、合併症を検討した。
【結果】J0ABPEQは腰椎機能障害スコアで軽度の悪化を認めた以外はすべて改善していたが、統計学的に有意差があったのは歩行機能障害であった。NRSも腰痛、下肢痛ともに改善していたが有意差はなかった。大血管損傷、感染、尿管損傷はなかった。術後3か月時に固定近位端椎体骨折1例に生じたが、保存的に治療可能であった。
【考察】当院ではindirect decompressionの適応として①安静時痛のない症例②筋カ低下をきたしていない症例を選択している。術後3か月時点でJOABPEQは改善傾向にあり、除圧術後例でindirect decompressionを期待するLLIFは有用である可能性がある。
28.再手術にLIFを用いた4例
 
久留米大学 整形外科学教室
 
横須賀 公章(よこすか きみあき)、佐藤 公昭、山田 圭、吉田 龍弘、松原 庸勝、岩橋 頌二、島崎 孝裕
 
 MIS手技の普及により様々な固定法が提案されている中、除圧術後の再狭窄や辷りに対する再手術においても、より低侵襲な手術法を求めるようになってきている。今回我々は、腰椎椎弓切除術術後の腰痛および下肢痛の再燃に対してXLIFを用いて再手術をした4例について報告する。平均年齢75歳、平均固定椎間2推間、平均手術時間 265.5min、平均出血量 69g、初回手術からの症状再燃時期は術後平均9カ月であった。術後症状は全例改善している。腰痛および下肢痛の再燃による再手術において、高度に癒着した病巣部を剥離して徐圧・矯正固定することは硬膜損傷・麻痺の危険性が高いのは周知の事実である。再手術でLIF(側方経路腰椎固定術)を用いる利点は、癒着した創部を触らずに間接的徐圧ができ、かつ矯正固定ができることである。しかし、癒着の強い症例やLIF操作の困難な症例に対しては十分に検討が必要と考える。また、初回手術で固定術までするかどうかの手術適応に関しても十分な検討が必要と思われる。
29.脊椎固定術後再手術における前側方進入椎体間固定術(LIF)の有用性
 
長崎労災病院 整形外科
 
奥平 毅(おくだいら つよし)、馬場 秀夫、山口 貴之、小西 宏昭
 
【目的】脊椎固定術後再手術にLIFを併用した症例の病態、周術期合併症、術後成績を調査する事。
【対象と方法】2014年12月から2017年12月まで当科で行ったLIF232例のうち脊椎固定術術後再手術にLIFを行った症例は17例(男性10例、女性7例)、平均年齢70歳(14~91歳)を対象とした。平均経過観察期間は13.4ヶ月(3~48ヶ月)であつた。検討項目は手術に至った病態、術式、 LIF椎関数、手術時間、出血量、周術期合併症、JOABPEQとした。
【結果】手術に至った病態(複数重複あり)は、固定隣接障害(固定隣接椎間障害、固定隣接椎体骨折を含む)12例、固定端椎体骨折3例、固定術後偽関節3例であった。行った術式は、椎体置換 4例、椎体間固定 13例で、椎体置換LIF椎関数は1.7椎間(1~3椎間)、手術時間/椎間 57分、出血量/推間 42gであった。腹部臓器損傷、神経合併症は認めなかったが、2例に後方手術部位感染を認めた。又1例で固定隣接椎体骨折を認め固定延長を行った。
【考察】固定術後再手術は前方支柱再建が必要な事が多く、低侵襲で行う事ができるLIFは有用な術式と考えられた。
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